関東平野の広い空を求めて

ここ半月ほど胸やけがひどく食道のあたりに違和感があって、思い切って内視鏡検査を受けた。胃カメラは20代後半に十二指腸潰瘍を患ったとき以来三十数年ぶりである。そのときもひどく辛かったが今回も楽ではなかった。結果は逆流性食道炎、たいしたことないですよと言われ、胃酸を押さえる薬をもらって昼前にすべて終了。ほっと一安心。気分が軽くなり、今日は一日休暇なので、ふらっとドライブに出た。

川越街道のバイパスを西に向かう。国道16号を越えると高い建物が減り、住宅地もまばらになり、冬枯れの野原や畑地がつづく。左手には東秩父の山稜。いい天気だ。空が大きく広がって、ああ関東平野だなあと実感する。BGMはずーっと1969年から1970年のマイルス・デイビス。Bitches Brewや1969年のチック・コリアが在籍していた頃のいわゆる「ロスト・クインテット」。

腹が減ったので街道沿いの山田うどんで天ぷらそばを食べる。山田うどんに入るは胃カメラ以上に久しぶり。運転に疲れてきたので少し走ってスタバでコーヒーを飲みながらBitches Brewの英文ライナーを読む。そう、Bob Beldenの言うように1969年という年は政治や社会の激動の年。そしてこの頃のマイルスの変貌はすごい。ベティ・メイブリー、ジミ・ヘンドリックススライ・ストーンの影響のもと、マイルスは「ジャズ」から「マイルス・ミュージック」へと舵を切る。

夕方に森林公園あたりまで来たの寄っていこうとしたらあいにく駐車場はちょうど閉まる時間だった。この辺で引き返すことにして比企丘陵をうろうろ走っていると偶然いちご農園が現れた。大振りのイチゴは目も覚めるほど艶やかだ。ひとパック買って、小一時間ほどあたりの雑木林を散歩した。よく冷えた夕暮れの空気が気持ち良い。