池内晶子展

浅間山を散歩してから府中美術館で池内晶子展を見る。とてもよかった。マテリアルは、赤く染めた糸。薄暗い展示会場内に張り巡らされ、幽く揺れる糸の群れ。目を凝らさないとみえない。作品を観るためには鑑賞者の集中力が必要だ。しかも糸の張り具合は入場者の体温や吐く息による湿度変化などによって変化するという。ということは、この作品は受け手との相関において存在するといってもよいだろう。さらに、絹糸は日本の産業の象徴でもある。究極のミニマリスム、コンセプチュアル・アート。ティム・インゴルドに、こういう「ライン」もあるんだよ報告したくなる。ほのかな照明に照らされてかろうじて浮かび上がる赤い糸のたゆといはハープの弦のようにもみえた。