ドライブ・マイ・カー/ベルイマン島にて

4月10日にアカデミー賞を取った『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)、5月2日に『ベルイマン島にて』(ミア・ハンセン=ラブ監督)、偶然にもふたつとも劇中劇の構造で成り立つ映画を見た。『ドライブ~』は村上春樹の短編が原作。演出家で俳優の家福が立ち向かうのはチェーホフの『ワーニャ叔父さん』。おそらく妻よりも家福のほうが伴侶を愛していたのだろう。芝居と人生が交錯する。台本読みの段階で徹底的に役者の感情を排除する練習風景が非常に面白かった。それからマニュアルシフトの家福の愛車を運転するみさきの淡々とした描写がよい。広島から新潟に向かいそこからフェリーで雪の北海道(「上十二滝村」という架空の場所)に渡るのだが、冬タイヤを履いていたのだろうかとどうでもよいところが気になった。映画を観た後、ひさびさに村上春樹を読んでみた。ぼくは『風の歌を聴け』から『ダンス・ダンス・ダンス』あたりまで村上春樹のファンだった。ずいぶん文体が変わったなと思う、うまく言えないけど。チェーホフも再読しようと思いつつ時間がない。

ベルイマン~』では映画監督どうしの夫婦がイングマール・ベルイマンの暮らしたスウェーデンフォーレ島を訪れる。挿入されるのは、新作の脚本と格闘する妻の架空の映画。こちらも作品と映画中の現実が交錯する。北欧の夏の風景が文句なく美しい。それから登場する年季の入ったvolvo(かな?)も味がある。自動車がちゃんと生活の道具の位置におさまっている感じがする。それにしても、ベルイマンをちゃんと観なくてはね。

淡々とした時間の流れのなかに芸術と人生(そして自動車という道具)の意味を考えさせる二作だった。