ヴェロニク・タジョ講演会

15時より駒場18号館でヴェロニク・タジョVéronique Tajoさんの講演会を聴く。『神(イマーナ)の影』(エディション・エフ、2019年)を訳された村田はるせさんが解説された。恥ずかしながら本作はまだ読んでいない。タジョさんは1955年、コートジヴォワール人の父とフランス人の母のあいだに生まれ、現在ロンドンとアビジャンに拠点をおいているそうだ。「記憶の義務によって書く」というプロジェクトに参加してルワンダのジェノサイドを調査して生まれたのがL'ombre d'Imana : voyage jusqu'au bout du Rwanda (2000)である。ルワンダの悲劇は、現在のウクライナ戦争のように欧米のメディアによって白日のもとに晒されることがなく、その実体はいわば闇のなかにある。文学こそがその闇を突くことができるのだ。本作品がルワンダの内戦をパン・アフリカン公共圏の問題として提示しているところに大きな意味があると西成彦先生はコメントされた。かつてフランツ・ファノンは『地に呪われたる者』のなかで、アフリカの統一というスローガンを実現することがいかに困難であるかについて分析していたが、ガエル・ファイユの『小さな国で』や「記憶の義務によって書く」プロジェクトに参加したタジョやモネネンボの仕事によって、ルワンダ内戦がパン・アフリカン公共圏を考えるための大きなトポスとして浮上しつつあることを理解した。文学の大きな力がそこで発動している。まずは読まねば。