2024-01-01から1年間の記事一覧

サルマン・ラシュディ『真夜中の子供たち』1~匂いのない読書

管啓次郎研究室主催、長編文学輪読会はインド亜大陸に上陸し、ポストコロニアル文学圏に接近してきた。作者サルマン・ラシュディはボンベイ生まれのイギリス系アメリカ人。2022年の作家刺傷事件は記憶に新しい。インドについて皆目無知である自分は、インド…

オスカー・ピーターソン!

UPLINK吉祥寺で妻と『オスカーピーターソン---black + white』(バリー・アヴリッチ監督、2020年)を観る。強力にどこまでもドライブするこの超絶技巧ピアニストのプレイさながら、短いシークエンスを連鎖させてどこまでもハイテンションで突き進む映像構成…

トーマス・マン『魔の山』(下)――華麗なるディスクールの饗宴

下巻に入って「キリスト教的共産主義」ナフタと、「共和主義的資本主義者」セテンブリーニとの激しく錯乱的な批判合戦が展開するのだが、417頁に新たなディスクールの担い手がサナトリウムに登場する。メインへール・ペーペルコルンという、ジャヴァでコーヒ…

八方尾根スキー

無性に八方尾根に行きたくなった。スキー場から雪を頂く唐松岳を見たくなったのだ。白馬に宿を取り、新しい板を買った。金曜日、午前中の授業を終えて午後休暇を取り、出発。クラブ活動で忙しいUは今回は付き合えず、30年ぶりの単独スキーである。ボロディン…

トーマス・マン『魔の山』(上)――華麗なるディスクールの饗宴

管啓次郎研究室主催長編文学読書会はトルストイのあとドイツ語圏に飛んだ(もうちょっとロシアの大地にとどまりたい気もしたのだが…)。『魔の山』(1924年)である。大学に入ってすぐニーチェの『ツァラトゥストラはこう言った』とともに読んだあとの高揚感…