2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

カメル・ダーウド、もうひとつの『異邦人』ムルソー再捜査(鵜戸聡訳、水声社)

『異邦人』において、ムルソーに殺害された名もなきアラブ人。その弟が、アルジェリアの酒場で夜毎、フランス人大学教授とおぼしき人物を相手にカミュのテクストに異議申し立てをおこなう。カミュを「君の殺人作家」と呼び、「退屈し、孤独で、自分自身の足…

ジョゼフ・ゾベル『黒人小屋通り』(松井裕史訳、作品社)を読む

松井裕史訳、ジョゼフ・ゾベル『黒人小屋通り』を読了。ついにフランス語圏カリブ海文学の古典が日本語で読めるようになったわけだ。名訳だと思う。作品の魅力は、描き出されるマルティニクのサトウキビ労働者の生活世界の鮮やかさに加えて、ゾベルのユーモ…