2019-01-01から1年間の記事一覧

万聖節に

昨日の朝、母が90才で帰天した。2年前から肺癌を患ったが特に何の治療もせず、最後まで自然に任せて暮らした。お盆すぎに黄疸が出て9月になって入院、すい臓に転移していたが、最後まで少しずつ食べ、よくしゃべった。亡くなる前夜、3人の息子は病室に集合し…

管啓次郎 詩集 犬探し/犬のパピルス

何人かの同僚に「あなたは犬派ですか?」と尋ねて「yes」と答えた人にこのすばらしい詩集を紹介してみた。そのときの犬派の人々が目を輝かせて犬への愛情を語る姿に驚いた。人の犬への情熱はなんと大きいのだろう。しばらくたって「どうでした?」と尋ねると…

恐竜博2019を見に行く

台風19号が通過し20以上の河川が氾濫した。日本各地に残されたその爪痕の映像にぼうぜんとしながら、上野の国立科学博物館に向かった。最終日とあって9時に到着したときには入場待ち時間90分とあったが実際は60分ちょっとで入ることができた。すごい人気であ…

管啓次郎『狂句集』(左右社)

風の強い小学校のグランドで息子のソフトボールの練習を見ながら読了。面白かった。読んでいるあいだに校庭の大木の大枝が折れて落ちてきた。 明解な満月狂気の鏡をひとつ割り (シュール。) らっこの毛皮がボディ無きまま踊ってゐる (アルトーかしら。) …

西荻の小さなカフェで辻瞼展を見て

勤め先の秋の祭りが終わり、木曜なのに休日である。車で多摩地区をぐるぐる走って図書館のはしご。翻訳のチェックで必要なクルティウスの『ヨーロッパ文学とラテン中世』と新岩波哲学講座7をようやくゲット。その足で西荻のヨロコビtoカフェへ。「A little …

ボルタンスキー展にて

母親といっしょに国立新美術館に現れたUは不機嫌であった。夏休みがもうカウントダウンに入ったというのに宿題はなかなか終わない、それなのに突然父親の気まぐれで呼び出され、あの狭苦しい大江戸線に閉じ込められて六本木くんだりまで連れてこられたのだ…

中村隆之×管啓次郎×星埜守之 at Cafe Lavanderia

夕方、新宿三丁目へ。19時より『ダヴィッド・ジョップ詩集』、『第四世紀』出版記念のトーク、朗読、音楽の夕べ。中村さんが解説し、管さんが朗読し、星埜さん、管さんと出版社の方のギター演奏が加わるパフォーマンス。前半がジョップだが、その最後のセゼ…

横浜にアフリカ絵本展を見に行く

短い夏休みの締めくくりに横浜に1泊して、夕べは中華街の景珍楼で夕食。今日はJICA横浜に村田はるせさん所蔵の「アフリカ絵本展」を見に行った。アフリカ文学者である村田さんが訳されたコートジボワールのヴェロニク・タジョの「アヤンダ」がとりわけ目を引…

酷暑の新宿、八雲 木版画展

昼すぎに自宅を出て中央線で新宿へ。ヒルトン東京のヒルトピア・アートスクエアで八雲 木版画展「ストーリーズピューパ」を観る。シックでかわいい作品がならび、いろいろな文学に寄り添えるようなしっかりしたファンタジーの表出があって、とてもよかった。…

フォークナー・メモ2

昨年は体調を崩し中止せざるを得なかった平湯キャンプだが、今年は8月5日から無事に3泊のテント暮らしを楽しむことができた。読書とハイキングと焚火と温泉。至福のひとときであった。フォークナーの 『町』(冨山房、フォークナー全集21、速川浩訳)をほぼ…

ジャズ・フルート考

3月にグラーフのことを書いたが、そういえばジャズでもフルートを使うよな、と気になり出して、ここ3ヵ月間ほどジャズ・フルートばかり聴いて暮らした。 フルートは大体サックス奏者の持ち替え楽器であるが、ジャズ・フルーティストとして真っ先に脳裏に浮か…

カメル・ダーウド、もうひとつの『異邦人』ムルソー再捜査(鵜戸聡訳、水声社)

『異邦人』において、ムルソーに殺害された名もなきアラブ人。その弟が、アルジェリアの酒場で夜毎、フランス人大学教授とおぼしき人物を相手にカミュのテクストに異議申し立てをおこなう。カミュを「君の殺人作家」と呼び、「退屈し、孤独で、自分自身の足…

ジョゼフ・ゾベル『黒人小屋通り』(松井裕史訳、作品社)を読む

松井裕史訳、ジョゼフ・ゾベル『黒人小屋通り』を読了。ついにフランス語圏カリブ海文学の古典が日本語で読めるようになったわけだ。名訳だと思う。作品の魅力は、描き出されるマルティニクのサトウキビ労働者の生活世界の鮮やかさに加えて、ゾベルのユーモ…

ダヴィッド・ジョップ詩集(中村隆之編訳、夜光社)を読む

詩(ポエジー)の振る舞いは多様だ。マラルメのように言葉自体への問いを前景化させる哲学的省察となることがある。ブルーズのように一人称をとりながら間主体的に民衆の生活を表出する歌となることがある。アフリカ人を両親にもち33才で早世したダヴィッド…

フルートを吹く

勤め先の吹奏楽部の定期演奏会。ティーンエイジャーとともにステージで1曲フルートを吹いた。曲は70年代後半の吹奏楽の名曲Disco kid。その名の通りディスコ調でSky highとかThe hustleみたいなわれわれの年代には懐かしい雰囲気。8小節のソロまでもらった。…

マリーズ・コンデへのオマージュ

義父の葬儀を終えて、18時恵比寿日仏会館に滑り込みで間に合った。三浦信孝×管啓次郎×大辻都という豪華キャストの講演会。昨年スキャンダルで中止となったノーベル文学賞代替のニューアカデミー文学賞を受賞したグアドループの女性作家マリーズ・コンデへの…

石田英敬先生最終講義

午前中の授業を済ませて本郷へ。15時より福武ホールで石田先生の最終講義が始まった。今日のお話のなかではマラルメとフロイトが大きなトポスである。マラルメは文字/記号が自動的に展開する現代のメディア状況を看破し、機械の無意識が人間に侵入する現代…

ミアノ読書会

早稲田にてL'impératif transgressifの読書会。今日も充実したディスカッションだった。Mianoの議論がアフリカ、サブ・サハラ発のポスト・コロニアル批評なのだなあと朧気ながらその射程が見えてきた。3月で大学を去られる立花先生から何冊かの本をいただい…

レオノーラ・ミアノ『顕れ~女神イニイエの涙~』

慌ただしい状況のなか、朝の重苦しい用事を済ませて、なんとか12時過ぎの新幹線に飛び乗って静岡へ向かう。静岡芸術劇場にて、カメルーン出身フランス在住の女性作家レオノーラ・ミアノが2015年発表したRévélation(日本語上演にして世界初演)を観る。14時…

ミクマク賛歌

今日は東京文化会館で高校生の音楽会を聴く。そのなかで、北米ミクマク族の音楽に触発されてL.Adamsという作曲家が書いた「ミクマク」賛歌という合唱曲にノックアウトされた。まず合唱団の半分が観客席に散らばり、舞台上のグループが微妙に音程のずれたロン…