2022-01-01から1年間の記事一覧

ティポンシュ・ライブ vol.4

ずーっと気になっていた、渡邊未帆率いる伝説のカリビアン・バンドTi'PUNCHのライブをついに聴く!四谷三丁目のCON TON TON VIVOは大入り満員。今日は16ピース(だったような気がする)のオーケストラ。粗削りだがパワフル。ミュージシャンの衣装を見てるだ…

ダンテを読む(3)『神曲』「天国篇」

三浦逸雄訳『神曲』読書会も今日で最終回。ベアトリーチェとともに、ダンテの主人公はついに地上を離れ天空へと旅立つ。プトレマイオスの天動説を下敷きに、月光天、水星天、金星天、太陽天、火星天、木星天、土星天、恒星天へと上昇する旅である。しかし恒…

古川日出男 第一詩集『天音』朗読会

かつて10年近く暮らした下北沢で迷子になった。午後7時、小田急が地下化してから初めて小田急口に降りると、かつての風景はどこにもなかった。google mapに導かれて店があるはずの場所に向かうが、ない。いったい何が起きたのか。途方に暮れてお洒落な店が…

シンポジウム「複数の世界文学に向けて:フランス語圏文学の遺産と未来」

シンポジウムは盛会だった。仕事の都合で遅刻して、中村隆之さんの発表の途中から入る。「クレオール、アフリカ、世界:日本におけるフランス語圏アフリカ系文学研究の四半世紀」と題されたその発表は、資料として配布された「20世紀末クレオール論の政治的…

ダンテを読む(2)『神曲』煉獄篇

今日は『神曲』読書会第2回、「煉獄篇」を読む。地獄の核心部から一気に南半球の海に浮かぶ山岳島に突き抜けたウェルギリウスとダンテの主人公は頂を目指して煉獄の門をくぐる。地獄篇は地底探検だったが、煉獄篇は登山である。煉獄は亡者の贖罪の場である…

シンポジウムのお知らせ 「複数の世界文学に向けて:フランス語圏文学の遺産と未来」

2022年11月26日(土)13時より早稲田大学8号館B107教室において開催される、フランス語圏文学についてのシンポジウムのお知らせです。日本では、2018年日仏会館で行われた国際シンポジウム「世界文学から見たフランス語圏カリブ海ーーネグリチュードから群島…

李禹煥展

六本木、国立新美術館でLee Ufan展を見る。もの派は基本的に好きである。李さんの作品は立体作品では石、鉄板、アクリル、木材などをシンプルに組み合わせ、自然と人工のはざまに見る者を連れていく。庭石のような石は白い矩形の空間のなかで鉄板やガラス板…

キース・ジャレット&ECM写真展

昨日はよく晴れたが今日は冷たい雨が降った。群馬県榛名山麓の吉岡町で開かれている「ECM&キース・ジャレット写真・資料展」を見に行った。10月7日のPIT INNのチラシでKeith Jarrettの新譜Bordeaux Concertのリリースと、この資料展の開催を知ったのである…

ダンテを読む(1)『神曲』地獄篇

プルースト『失われた時を求めて』、セルバンテス『ドン・キホーテ』に続いて、管啓次郎研究室主催読書会第3弾はダンテ(1265-1321)の『神曲』La Divina Commedia。19世紀末フランスから17世紀初頭スペインを経て14世紀前半のイタリアへと時空を遡行する。テ…

「モツクーナス=ミカルケナス=ベレ」トリオ with 大友良英&仲野麻紀

東京は二つ玉低気圧の通過で冷たい雨と強風に見舞われた。おそらく移転後のピットインに行くのは初めてだと思う。中に入ると、とたんにジャズの匂いに包まれた。ああ、ほっとするなあ。東欧から来たトリオについては全く知らない。ウイスキーをロックでちび…

セルバンテス『ドン・キホーテ』6(後篇三)

牛島信明訳岩波文庫版『ドン・キホーテ』読書会もついに最終回。最終巻にたどり着いた。ドン・キホーテの狂気は次第に弱まってゆく。物語には盗賊の頭ロケ・ギナールのような魅力的な人物が登場しドン・キホーテは脇に退く場面が多くなる。そして《銀月の騎…

長谷川潔展

受験に追い立てられていた高校生の頃、帰宅途中に池袋の西武デパートのレコード屋に時々立ち寄り、茫漠とした風景が鮮烈だったECMのジャケットを眺めたり、隣の美術ギャラリーで版画を見るのがささやかな楽しみだった。とりわけ長谷川潔のモノクロームのメゾ…

セルバンテス『ドン・キホーテ』5(後篇二)

『ドン・キホーテ』前篇出版が1605年。後篇の出版は1615年である。逆上して人形劇を破壊するドン・キホーテは「拙者には今しがた起こったことがすべて、そっくりそのまま現実のこととして起こったように思われた」と吐露する(47頁)。相変わらずフィクショ…

大阪にて――万博と民博、ふたつのセカイ

8月12日、Uが出場する中学ソフトボール全国大会(男子ソフトボールってレアです)の応援に大阪まで車を飛ばす。500km越えのロング・ドライブである。13日、舞洲のグランドで長崎の強豪チームと対戦したが、無念の1回戦敗退。Uはショートで1番。コロナ明けの…

ヘルツォーク『歩いて見た世界——ブルース・チャトウインの足跡』(2019)

10日間のコロナ感染自宅待機期間が終了。神保町へ繰り出す。偶然入った「はちまき」の天丼が旨かった。量もたっぷりでこれが800円とは驚きである。昭和6年創業の老舗だそうだ。さらに偶然見つけたjazz喫茶Big Boyでアイス・コーヒーを飲みながら小一時間過ご…

セルバンテス『ドン・キホーテ』4(後篇一)

コロナに感染してしまった。Uの中学で感染生徒が急増し、16日にUが発熱。2日後にぼく、さらに2日後に妻が発熱。抗原検査やPCR検査で全員陽性だった。幸い3~4日で熱が引き、重症化は免れたが、20日の読書会はキャンセル。とりあえず、本巻の感想を20日の日記…

陣野俊史『魂の声をあげる』—現代史としてのラップ・フランセ

GWあたりから読み(聴き)はじめ昨日読了。陣野さんのガイドに導かれてそこに登場する音楽を片端から聴いていく至福の時間。夕食後ウイスキー片手にyou tubeをチェックしていると「へえ、お父さんラップなんか聞くんだ」とUは意外そうな顔をした。(そうだ…

『竹馬に乗って時を探す』——『失われた時を求めて』オンライン読書会の十四ヶ月

2021年1月から2022年2月まで継続された明治大学管啓次郎研究室主催「オンライン・プルースト読書会」の成果がリトルプレスで出版されました。私も、このブログで発表したエッセイのいくつかに手を入れた「コンブレーのメガネ屋」という文章を寄稿しました。6…

セルバンテス『ドン・キホーテ』3

今日は牛島信明訳、岩波文庫版『ドン・キホーテ』第3巻を読む。前巻33章から本巻35章に挿入される小説「愚かなもの好きの話」が一読してなんとも居心地がよくなかった。アンセルモがなぜ親友ロターリオに自分の妻カミーラを誘惑させようとするのかが、よくわ…

森のムラブリ!

車を飛ばして横浜シネマリンへ。3月の渋谷UPLINKでの上映を見逃した『森のムラブリ』(金子游監督、2019年)をついに観る! すばらしかった。(敢えて言えば、85分はちょっと短かった。)若き言語学者伊藤雄馬氏が、タイとラオスに狩猟採集民ムラブリ族を訪…

セルバンテス『ドン・キホーテ』2

セルバンテス読書会第2回。『ドン・キホーテ』前篇第22章から第34章までを収める牛島信明訳岩波文庫版第2巻を読む。ドン・キホーテは果たして完全な狂人なのだろうか。そうとも言えまい。憂い顔の騎士は徹底的に狂人を、思い姫に恋焦がれる騎士を演じようと…

ドライブ・マイ・カー/ベルイマン島にて

4月10日にアカデミー賞を取った『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)、5月2日に『ベルイマン島にて』(ミア・ハンセン=ラブ監督)、偶然にもふたつとも劇中劇の構造で成り立つ映画を見た。『ドライブ~』は村上春樹の短編が原作。演出家で俳優の家福が…

セルバンテス『ドン・キホーテ』1

明治大学管啓次郎研究室主催の長編小説輪読会(と勝手に名付けました)第二弾はセルバンテス! 20世紀初頭のフランスから17世紀初頭のスペインへとタイム・スリップである。『ドン・キホーテ』は児童書版で読んだきり。大人になってから一度会田由訳で挑戦し…

アラン・マバンク『アフリカ文学講義』

ずいぶん時間が経ってしまったが、1月29日の立命館大学、西成彦先生主催「ジェノサイド×奴隷制」研究会の後半のレポートをアップしておく。 研究会後半はアラン・マバンク『アフリカ文学講義』(中村隆之・福島亮訳、みすず書房、2022年)が取り上げられた。…

マイルス・デイヴィスのほうへ (9)アコースティック・マイルス1945-1963

昨年はずいぶん電気マイルスのことを書いたが、1975年でひと段落したあと、去年の暮れあたりからアコースティック時代のマイルスを聴き直した。古いレコードやCDを引っ張り出して音源の虫干し。ひたすら懐かしい。 ジュリアード音楽院をドロップアウトした若…

プルースト読書会 vol.14

岩波文庫版、吉川一義訳『失われた時を求めて』第14巻「見いだされた時Ⅱ」。ついに最終巻に辿り着いた。感無量である。療養生活のあと20年近く経ってから久しぶりにゲルマント大公のサロンに足を向けた「私」が目の当たりにしたのは、老いて変わり果てた社交…

PARADISE TEMPLE 管啓次郎詩集×吉江淳写真展

蔵前のiwao galleryでPARADISE TEMPLEの表紙を飾る吉江淳さんの写真展を見る。PARADISE TEMPLEの表紙を見た時、写真ではなく絵だと思った。絵画的な質感がすごく新鮮だった。吉江さんの写真に写し出される、街と自然のあいだの中途半端な場所はどこかアイデ…

テレジン収容所の児童画展

宮地楽器ホール地下1階市民ギャラリーにて、妻とテレジン収容所の子供たちが描いた絵画展を見る。テレジンはチェコの1万5千人のユダヤ人の子供たちが収容されたアウシュビッツへの中継所である。見ているうちに辛くて胸が苦しくなった。子供たちが描いたのは…

オレリア・ミシェル『黒人と白人の世界史』

立命館大学国際文化研究所プロジェクト、西成彦先生主催の「ジェノサイド×奴隷制」第2回研究会にオンライン参加させていただいた。前半は中村隆之さんによる本書の解説とディスカッション。中村さんが解説されているように、本書は奴隷制/人種問題を考察す…

プルースト読書会 vol.13

吉川一義訳『失われた時を求めて』第13冊は第7篇「見いだされた時」の約三分の二を収録。ついに「私」は小説家になってゆく。第一次大戦の時代を経て老いてゆくシャリュリスの描写が味わい深いが、男爵の登場を導く街の描写もまたよい。たとえば196頁のパリ…