「モツクーナス=ミカルケナス=ベレ」トリオ with 大友良英&仲野麻紀

東京は二つ玉低気圧の通過で冷たい雨と強風に見舞われた。おそらく移転後のピットインに行くのは初めてだと思う。中に入ると、とたんにジャズの匂いに包まれた。ああ、ほっとするなあ。東欧から来たトリオについては全く知らない。ウイスキーをロックでちびちび飲みつつ、わくわくしながら演奏の開始を待った。エスニックかなーとなんとなく予想していたら、怒涛のフリージャズだった。仲野さん曰く「ど真ん中直球」。いやーすごかった。気持ちよかった。リューダス・モツクーナスLiudas mochūnas(sax,cl)とアルナス・ミカルケナスArnas Mikalkėnas(pf)はリトアニア、ホーコン・ベレHåkon Berre(ds, perc)はノルウェー生まれ、トリオは2014年に結成されたという。彼らの音楽を聴いてみて、ベースレスでもなんの不足もない。モツクーナスの「武器」は多彩だ。フリーキートーンの間に、超低音をブッ、ブッと慣らしタンポンの開閉音や楽器をたたく音を織り交ぜて放射されるうねりはすごい。ちょっとディジリドゥーを思い浮かべる。誰かのソロに他のメンバーがスポンテニアスに反応するスリリングな展開。誰もが次に俺がリードするぞと待ち構える。大友さんのギターが過激に介入し、仲野さんも楽器を振り回しながら音をまき散らす。それにしてもなんと色彩豊かな音楽だろう! そしてみんなよく聴きあっていてバランスがいい。久しぶりに素晴らしいフリージャズを聴いた幸せな宵だった。2014年リトアニアの首都VilnusでのライブCD plungedを買って帰る。これがまた素晴らしい。しばらく繰り返し聴くだろう。