2020-01-01から1年間の記事一覧

ゲルハルト・オピッツ ピアノリサイタル

小金井の宮地楽器ホールでゲルハルト・オピッツのリサイタルを聴く。「悲愴」「月光」「テンペスト」「熱情」というオール・ベートーベンプロ。クラシックのピアノをホールで聴くのは何年振りだろうと手帳をめくると、2005年10月アルド・チッコリーニのリサ…

陣野俊史『泥海』

しばらく前から読書会でご一緒するようになった陣野俊史さんの『泥海』を一気に読了した。ラトゥールの『世界戦争』の翻訳を終えたら読もうと心に決めていた一冊。理由は自分でもわからない。だがその直感は正しかった。何の予備知識もなしに読み始めるとま…

オラファー・エリアソン展

ラトゥールの小さな翻訳がひと段落した。先日のNHK日曜美術館で小野正嗣さんがじつに楽しそうにオラファーの作品と戯れていた様子をみて、昼過ぎ、家族で木場の東京都現代美術館まで車で出かけた。久しぶりの遠出(!)である。氷河の後退の組み写真を見て、…

チャーリー・ヘイデンを聴く(2) チャーリー・ヘイデンのダイアローグ

チャーリー・ヘイデンって真摯なミュージシャンだなあと思ったのは、クリード・テイラーがプロデュースして1990年に発売された映像作品Rythmstickをみたときである。車のなかで即興音楽の意義や、スタジオの前でアンソニー・ジャクソンとエレキベースでの表…

チャーリー・ヘイデンを聴く(1) チャーリー・ヘイデンのプロテスト

ここ1か月、机のまわりの整理をすすめた。山のように堆積した切り抜きや論文コピーやノートやメモの一番下までたどり着いたら、2015年まで時間を遡行した。たしか夏に環境・文学学会のパネル発表をさせてもらった年だ。日常生活で手一杯となり、意志薄弱な性…

コロナ関連の新聞記事から

淡々とテレワークで日々が過ぎてゆく。コロナ関連の朝日新聞記事の印象。『ホモ・デウス』がベストセラーのヘブライ大学教授・歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏はさてどんなコメントをするだろうかと期待して4月15日のインタビュー記事を読んだがやや…

レーンホフの「宇宙船リング」の告発

コロナ肺炎対応で、3月2日からテレワークが始まった。夜、余裕のできた時間で少しずつワグナーの『ニーベルングの指輪』のLDを15日間かけて久しぶりに全部見た。1989年ミュンヘンでのサヴァリッシュ指揮、レーンホフ演出の舞台である。日記を遡ると2013年2月…

青木野枝展「霧と鉄と山と」

昼過ぎに家族3人で府中美術館に向かった。青木野枝さんの作品にはじめて出会ったのは10年前、美術を専攻する高校生たちへのレクチャーのときだった。鉄という素材でなんと軽やかに空間を構成するのだろうと感嘆した(2010/07/20「鉄と即興」)。翌年1月に…

ケベック詩選集(立花英裕他編訳、彩流社)

詩を読むことは旅をすることだ。19世紀後半から21世紀の現在まで時代の流れに沿って紹介される36人の詩人のことばの断片を追いながら、2001年の夏に訪れたケベック・シティを思い出した。ページを繰るたびにフランスとはまったくちがったカナダ東部の自然や…

アチュベとラトゥール

正月恒例の志賀高原スキーのあと、5年ぶりにインフルエンザにかかってしまった。熱はすぐ引いたがしばらく外出できず、アチュベ『崩れゆく絆』(粟飯原文子訳、光文社文庫)を読了。読了後しばらく何とも言えぬ幸福感を味わった。アフリカ文学の第一人者によ…

マルティン・ブーバーと猫

冬の季節になるとティーンエイジャーと読む英文のレベルが上がって、面白いものがちらほら現れる。一昨年はマイケル・ポランニーのPersonal Knowledge(1958)の序文の引用に出くわし、おお懐かしいと、ちくま文庫版『暗黙知の次元』を読み返したのだった。「…