2014-01-01から1年間の記事一覧

横浜のDAMNATION

しばらくお休み状態となっているWC研の久しぶりの集まりに横浜に出かけた。関内のジャック&ベティで15時から『ダムネーション』(ベン・ナイト&トラヴィス・ラメル監督、2014年、アメリカ、87分)を観る。アメリカ合衆国で過剰に作られたダムの取り壊しを…

ある精肉店のはなし

冷たい雨が一日降り続いた。ポレポレ東中野で纐纈あや監督『ある精肉店のはなし』を滑り込みで観る。大阪市貝塚市にある牛の飼育から屠畜解体、販売までおこなう肉屋さん、家業を継いで7代目となる北出ファミリーの物語。2012年3月に屠畜場は閉鎖された。い…

動物のいのち

寒冷前線の通過だったのだろう、明治大学中野キャンパスに遅刻して到着した途端に猛烈な嵐に見舞われた。シンポジウムはその突然の嵐のようにすごかった。前代未聞のセッションだった。はっきりと境界線の引かれたテリトリーのなかでカノンに従い作法にのっ…

狭山丘陵 大谷戸湿地

小金井に引っ越したのに忙しくてなかなか近場を探索する余裕がなかったが、今日は車で狭山丘陵に向かった。狭山湖のあたりで林道に入り込んでしまい、湖の北側の砂利道をそろそろ走っていると、大きなビジターセンターが現れた。「さいたま緑の森博物館」と…

フェルディナント・ホドラー展

(展示のパネル解説が)いまひとつだったチューヒリ美術館展で気になったホドラーの作品展が国立西洋美術館で開かれているというので観に行った。"Towards Rhythmic Images"という副題はまさにこのスイスの国民的画家の可能性の中心をついていると思った。Fe…

教師論

同僚から面白いからとすすめられて内田樹・中田考『一神教と国家――イスラーム、キリスト教、ユダヤ教』(集英社新書)を読了。ここのところ時の人という感じの中田先生。レヴィナス翻訳者としてユダヤ教の立場を代弁してイスラームに帰依した中田先生と互角…

チューリヒ美術館展

スイスのチューリヒ美術館の所蔵作品展を観に六本木の国立新美術館に出かけた。たしかに傑作ばかりでゴージャスな展覧会だった。エルンストの「石化した森」は圧倒的だし、マグリットは自分の若さを測るリトマス試験紙である。でも解説パネルはちょっといだ…

京都の環カリブ海文化研究会に行く

京都、立命館大学衣笠キャンパスにて、「環カリブ海文化研究会」に参加した。 最初の西成彦先生の発表は「コロンブス暦〈第六世紀〉の〈アメリカ大陸文学〉と〈五つの大きな舌〉――オランダ領アンチルの位置」。2010年にキュラソー、シント・マールテンがオラ…

駅を降りて、ずっと気になっていたが足を向けたことのない路地に入ると、見知らぬ風景が広がった。角をひとつ曲がるとすぐに大きな川の岸に出た。ドブ臭さがかすかに鼻を突く。コンクリートの堤防にもたれかかり、大きな水の広がりを眺めた。Nothing is true…

クァジーモドの詩を読む

秋の日はつるべおとし。サルヴァトーレ・クァジーモドの詩集『そしてすぐに日が暮れる』(平凡社ライブラリー)を、河島英昭氏のすばらしい訳で読了した。1902年にシチリア島で生まれ、政府の土木局の役人として働きながら詩作を続け、仕事を辞したあと創作…

ヴァロットン展

ヴァロットン展のチケットを頂いたので妻と丸の内の三菱一号美術館まで出かけた。都心に出るのは久しぶりで新鮮だった。三菱一号美術館は明治期の歴史的建造物で2009年に美術館として復元竣工された。ボナールらのナビ派との交流を続けながら微妙に距離をと…

串田孫一との再会

旅の最後に白老ポロトコタンを訪れた(8/24)。アイヌ民族博物館を見学し、チセでアイヌ古式舞踊を観た。2011年の夏には阿寒のコタンで観たが、今回はトンコリの演奏に接することができて貴重だった。白老はすばらしいが、個人的には阿寒のコタンもそれに負…

虫たちとの出会い

今回の旅の目的地のひとつは、北海道の大学で植物生態学を教える弟が趣味と研究を兼ねて大雪山の西側、東川町の山林の一画に建てた山小屋である。廃屋を改修してつくられたその小屋はミズナラとカラマツの林の斜面にあった。電気は来ているがガスはなく、炊…

スーザン・フィリップスとの出会い

8月17日、北海道旅行の初日、新千歳空港で「札幌国際芸術祭」のポスターを見て彼女が参加していることを思い出し、支笏湖を訪れたあと、札幌芸術の森にかけつけ、スーザン・フィリップスのサウンド・インスタレーション「カッコウの巣」(2011)を見る/聞く…

雨のキャンプサイトとオーウェル

ここ3年ほど、夏の休暇のあいだに奥飛騨の平湯でオートキャンプをしている。安房峠を長野から岐阜側に越えた標高1300mの樹林帯に広がるワイルドなキャンプ場で、気温は真夏でも20℃台と快適である。今年は8月4日から7日にかけて3泊滞在。以前テントを張ったお…

『チーロの歌』

今日の午後は府中市民球場で野球の応援。夜は下北BBにて、管啓次郎訳の絵本『チーロの歌』(クレヨンハウス)の出版記念イベント。お相手は野崎歓さん。今晩は管さんの朗読にフルートで音楽をつけることになった。あらかじめ作っておいたいくつかのモチー…

ヘンリー・ジェイムス『ねじの回転』

文学研究に舵を切った若者とのメールのやりとりがひょんなきっかけとなって、Stream of consciousnessの先駆者ヘンリー・ジェイムスの『ねじの回転』(1898年)を読み直した。苦労して整頓を終えた本棚の片隅から取り出した古びた新潮文庫(蕗沢忠枝訳)の裏…

トドロフ『他者の記号学――アメリカ大陸の征服』

コロンブスやコルテスらによるアメリカス「発見」と征服。インディオとスペイン人との接触を「コミュニケーション形式」という視点から分析したコロニアリスム研究の古典を通読した。原著は1982年、翻訳は1986年に出た。分析されるテクストはほぼ征服者側の…

シュタイナーの黒板絵

妻に誘われてワタリウム美術館にシュタイナーの黒板絵を見に行った。カンディンスキーやヨゼフ・ボイスに大きな影響を与えたこの思想家の巨大な思想圏を遠くから眺める。『ルドルフ・シュタイナーの黒板絵』を買って読んだ。坂口恭平が「ゲーテアヌム旅行記…

駒場の記号学会にて

Hybrid Reading――紙と電子の融合がもたらす〈新しい文字学(グラマトロジー)の地平〉という魅力的なタイトルに惹かれて、駒場で開かれた記号学会に出かけた。石田英敬×ベルナール・スティグレール×キム・ソンドによるプレナリーセッションを聴講。自分自身…

keith jarrett solo 2 nights

GWに母親を練馬から迎えて、引っ越しが無事完了した。これから新居の整理やさまざまな交渉など山のような仕事が待ち受けているにもかかわらず、キースのソロとなればやはり行かずにはいられない。5月6日の渋谷オーチャードホール、9日の紀尾井ホールでのコン…

柳谷あゆみ『ダマスカスに行く』(2012)

京都で久々に再会した鵜戸くんから頂いたすごい歌集を読み終えた。いったいなんで銃声飛び交うシリア・アラブ共和国の首都で短歌を詠んでいるのか? 柳谷さんはシリア・イラク地域の政治史研究者でアラビア語の先生なのだそうだ。なるほど。それにしても、何…

浅草一文&Lupeライブ

勤め先の仕事の区切りが近づいた。昨日はIさんおすすめの「浅草一文」で部署の打ち上げ。雨まじりの寒い夕暮れ、仲見世通りをみんなでぶらぶら歩くと旅行気分。風邪をひいて体調が今一つだったが、深酒にならずかえって良かった。ねぎま鍋と日本酒で身体があ…

痕跡とライン――グリッサンとインゴルドをめぐって

5日、東京発16:17のぞみ49号で京都へ。19時前に到着。寒い。ホテルにチェックインしてロビーでみんなと待ち合わせ。そのあとホテル近くの居酒屋で「打ち合わせ」。6日、バスで京都造形芸術大学瓜生山キャンパスへ。11時に第2回フランス語圏文学研究会の発表…

東京うろうろ・SAMELAND

今日は東京大移動。5時間くらい電車に乗っていたのではないか。青砥から国立まで電車で移動し用事を済ませ、田舎を歩き、木や草の芽吹きに春を感じ、すこし幸せな気分になり、東京まで戻り、別の用事を済ませ、午後5時すぎに恵比寿のPOSTにたどり着いた。シ…

『ショック・ドクトリン』&『Torii』

奇蹟的にフリーとなった午後、久々に充実した時間を過ごした。まず14時からWC研。南映子さんナビで『ショック・ドクトリン』(2009年マイケル・ウィンターボトム/マット・ホワイトクロス監督)を観てディスカッション。原著はカナダのジャーナリスト、ナオ…

中村隆之『カリブ‐世界論』

2009年カリブ海のフランス海外県グアドループ島やマルティニク島などで発生したゼネストはどんな意味をもっていたのか?フランス本国に対する島の経済生活改善の大規模な異議申し立ての背景には、フランス植民地主義の歴史が累々と連なっている。90年代に紹…

Ayuo sings Lou Reed’s Berlin

この日は渋谷Last Waltzへ。Ayuoさんとかつてワークショップでご一緒したこともあるピアニストの瀬尾真喜子さんのライブを聴く。ルー・リードの『ベルリン』にドビュッシー、ガーシュイン、コール・ポーターを交えたプログラム。ドビュッシーとガーシュイン…

大辻都『渡りの文学』刊行記念イベント

(これを書いているのは3月17日。年が明けてから引っ越しがにわかに具体化し、1月2月と目が回る忙しさでブログを書く暇もなかったが、ようやく余裕が出てきた。忘れないうちに遡っておく。) この日は一日上野の東京文化会館に詰める仕事だったが、途中なん…