柳谷あゆみ『ダマスカスに行く』(2012)

 京都で久々に再会した鵜戸くんから頂いたすごい歌集を読み終えた。いったいなんで銃声飛び交うシリア・アラブ共和国の首都で短歌を詠んでいるのか? 柳谷さんはシリア・イラク地域の政治史研究者でアラビア語の先生なのだそうだ。なるほど。それにしても、何と骨太でずんずん進んでいく日本語であることか。詩句は繊細であっけらかんとあちこちに逸脱しながらも、基本的にはたたみ込むようなコン・ブリオ。「いまわたしが歩くときにはがっしゅがっしゅと鳴っているだろうまだ鳴るだろう」。アラビア語の響きが日本語に流れ込んでいるのだろうか。濁音のアクセントが色濃い。p.37〜38の「図鑑ありがとう」のインパクト。「幼齢のいもむしはのばされならぶみなだんだらだ図鑑ありがとう」だんだら大行進。
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