2013-01-01から1年間の記事一覧

銀河鉄道の夜

少し前まで息子のUは木のレールと汽車で遊ぶのが大好きだった。山ほどある直線と曲線のレールをつなげてレイアウトし、トーマスやらパーシーやらを手で走らせるのだが、そのとき必ず「ごとん、がたん」と言うのがどうにも可笑しかった。「がたん、ごとん」…

カテブ・ヤシン『包囲された屍体』リーディング上演

14時より池袋芸術劇場アトリエウエストにてカテブ・ヤシンの戯曲『包囲された屍体』(Kateb Yacine, Le cadavre encerclé,1959)のリーディング上演を見る。鵜戸聡訳、日本初演である。力のこもったパフォーマンスだった。上演後、林英樹さん司会のラウンド・…

管啓次郎×石田瑞穂『ストレンジオグラフィ』刊行イベント

勤め先の仕事がそろそろひと段落。ぶらりと下北沢にでかけた。金曜の宵だというのに閑散とした北口の路地を散歩する。ちょっと淋しいくらいの街の風情がちょうどいい。他にお客さんのいないいつもの店で塩ラーメンを食べ、スタバでキャラメル・マキアートを…

ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』

仕事先でミュージカル映画『レ・ミゼラブル』(トム・フーパー監督、2012年)を見る。ミュージカル映画なんて自分から見ることはまずないがこいつは驚いた。アフレコでなく歌と演技が同時撮影なのだそうだ。「うた」というかたちで発せられることばには独特…

人の波

同僚とふたりで永田町、参議院議員会館前の路上へ。思ったより人出は少なかった。午後4時頃、秘密保護法案は参院国家安全保障特別委員会でどさくさ紛れの強行採決で可決された。辻元清美や志位和夫がすぐ近くでマイクを握った。本会議はどうなるのか。この現…

リービ英雄さんドキュメンタリー映画を見る

仕事のあと明治大学中野キャンパスへ。東京ヘテロトピアの総括レクチャーの途中から入る。そのあと大川景子監督『異郷のなかの故郷――作家リービ英雄52年ぶりの台中再訪』を見る。強烈なインパクトのあるドキュメンタリーだった。合衆国の外交官の父をもつ作…

ヴェルジェス・セミナー(3)

午前中は江戸川総合文化センターで地区音を聴く。今回はステージに乗る余裕がなかったけど、みんな上手になった。感無量。今年はピアノもフルートもほとんど手つかずだった...。クリスマスコンサートには参加するぞ。 午後から恵比寿へ。べルジェス・セミ…

ヴェルジェス・セミナー(2)

午後仕事を早目に切り上げて恵比寿に向かう。べルジェス・セミナー第2回は恵比寿の日仏会館にて17時半から始まった。ディスカッサントは立花英裕先生。まず『エメ・セゼールと世界の反抗』(ジェローム・セシル=オウフレ監督、2013年)の上映。1時間ほどのド…

PortB『東京ヘテロトピア』トークイベント

ラジオ片手に都内のさまざまな場所に赴き、そこでラジオから流れる物語を聴く。観客をツアーに動員し、作品のなかに取り込む画期的な高山明さんの「演劇作品」『東京ヘテロトピア』。そのパフォーマンスを体験してもいないのに、池袋芸術劇場のアトリエイー…

ヴェルジェス・セミナー(1)

今日は仕事を休む。子供を幼稚園に送り、昼は吉祥寺の「メグ」で『ニグロとして生きる』を復習。ビル・エヴァンスのビレッジ・バンガードのライブがかかってた。午後は幼稚園の三者面談。それを終えてから大急ぎで国立、一橋大学へ。少し遅れた。タイトルは…

後藤直子+ウィーン・ラズモフスキー弦楽四重奏団

銀座王子ホールにてモーツァルトのピアノ四重奏曲ト短調K.478とシューマンのピアノ五重奏曲変ホ長調Op.44を聴く。両方とも初めて聴く曲で楽しかった。ピアノと弦楽四重奏はよく呼吸が合ってひとつに溶け合っている。特にシューマンが良かった。シューマンっ…

パスカル・キニャール+津島祐子

読んだことがないがずっと気になっている何人かの作家のひとり、パスカル・キニャールの講演会があるというので飯田橋のアンスティチュ・フランセに行ってきた。津島祐子さんがアイヌ民話の仏訳者であることを知った。文学と喪がテーマだったが、「消えゆく…

多和田葉子・高瀬アキパフォーマンス

早稲田の小野記念講堂にて18時半より。早稲田でのパフォーマンスは今年で4回目という。前から行きたかったんだけど今年ようやく足を運ぶことができた。ふたりのパフォーマンスに接するのは2回目。1回目は2007年の11月、横浜の県民ホールギャラリーだった。そ…

『時制論』朗読会 at ESPACE BIBLIO

管さんの新しいエッセー集『ストレンジオグラフィ』刊行記念イベントというので新著についてのお話しが聴けるのかと思って出かけたら、『時制論』朗読会だった。しかしドリアン助川さんと管さんの緩急自在の掛け合いは実によかった。耳を傾けているうちに、…

管啓次郎『時制論』あるいはポストカードの詩学

前3作とはがらっと趣を変えた管啓次郎第4詩集。過去形と現在形とが交互に進行するリズムをとりながら、1行1行がひとつの小宇宙として独立した。そこには読む行為によって過去の世界に属するエクリチュールからなにものかが読む現在の時間へと浮上する、とい…

『十和田、奥入瀬 水と土地をめぐる旅』

下北沢B&Bでの出版記念トーク、小野正嗣×管啓次郎「地誌とフィクションが重なる対話」に出かける。じつに久しぶりの小野さんとの再会。基本かわらないけどマル眼鏡に風格を感じました。十和田奥入瀬芸術祭の参加作品として管さんによって編まれた「土地」を…

別府のサルトリウス

水曜日の夜にようやく『サルトリウス』の訳読を終え、木曜日に発表用のハンドアウトをつくり、金曜日の昼に羽田空港のエクセルホテル東急のロビーのPCで校正し、15:55発ANA197便で大分へ出発。まさに綱渡りの準備だった。台風の影響でよく揺れた。乱舞する雲…

下北ノスタルヂ

管啓次郎第4詩集『時制論』刊行記念の誌の朗読会に雨の下北へ。昨晩勤め先に泊まり込みでろくに眠れず、ややナチュラル・ハイで会場の本屋さんB&Bへ。倉石信乃さん、南映子さんを交えての朗読と演出家の高山明さんとの対談。詩集についてはあらためて書き…

『ミグラード』ライブ

9月に入って空き時間はすべて『サルトリウス』の訳読につぎ込む毎日。でも今日はどうしても見逃せないイベントに池袋まで出かけた。勁草書房から出版される『ミグラード』刊行記念ライブ&朗読会。ミグラードとはエスペラント語で「渡り」。震災のあとに立ち…

国立のカリブ海トーク

午後4時より、お洒落な国立のキノ・キュッヘにて中村隆之氏をホストにラム酒を飲みながらカリブ海トーク。中村さんの今の問題意識が語られたのがよかった。カリブ海地域研究が現地にとどまらずわれわれの生きる世界全体を見回すための強力な射程を有している…

纐纈あや『祝の島』&ドリアン助川アルルカンシアター

8月が終わってしまった。グリッサンに集中するつもりだったが、突然降ってきた日本語からフランス語と英語への事務翻訳仕事のために完全につぶれた。それでもキャンプを2回敢行、雨のなか根性のバーベキューと乗鞍岳登山(岐阜県平湯3泊)、熊よけ鈴を鳴…

崖線(はけ)を歩く

気温が37℃あたりまで跳ね上がった灼熱の午後。引越し先を探してここ数カ月小金井や国分寺あたりを彷徨する日々が続く。今日は物件チェックもかねて小金井市の国分寺崖線を歩いた。崖線(がいせん)は武蔵野方言ではなまって「はけ」と呼ばれる。野川の北に東西…

フランシス・アリス展―ジブラルタル海峡編

午後、東京都現代美術館へ。ようやくフランシス・アリス展を見ることができた。「川に着く前に橋を渡るな」(2008)のアクションの記録映像&ドローイング&インスタレーション。ジブラルタル海峡によって隔てられたアフリカとヨーロッパを「靴の船」を持った…

センベーヌ・ウスマン『母たちの村』(2004)

久しぶりにWC研でホストを務める。明治大学中野キャンパス初潜入である。セネガルの作家、映画監督であるSèmbene Ousmane(1923-2007) の『母たちの村』は124分という長さを感じさせない強烈なインパクトのある作品だった。15%の少女が命を落とすという女子…

セゼール台風

夕立をきわどくかわして国分寺の東京経済大学へ。「カルチュラル・タイフーン」と銘打たれたカルチュラル・スタディーズ学会で注目のセゼール・セッションを聴く。ネグリチュードの詩人エメ・セゼールを〈植民地主義〉〈アフリカ〉〈シュルレアリスム〉とい…

未来へのアーカイブ

福島の原発事故の記憶がなぜこんなにあっという間に人々の記憶から消えてゆくのだろう。駒場で放送人の会と情報学環主催の「未来へのアーカイブ 原発事故・放射能汚染の過去/未来」という講演会を聴く。カタストロフィの報道における時間、社会の記憶、メデ…

AYUO新境地!(2)

きょうも暑かった。AYUOさんのスペシャル・ナイトの二日目。時間を間違えて第Ⅰ部の終わりごろにKENに滑り込む。第Ⅱ部の「アルトーとジャン・ルイ・バロー」。AYUO作曲のピアノ・ソロ作品Aberalrd's Prayerは充実した力作。次のアルトーのテクストによるエレ…

サルトル学会

炎天下の池袋、立教大学のサルトル学会に出かけた。3人の発表を聞き、今日もたくさんのことを学んだ。中村隆之氏の「サルトル/ファノン試論」では、LamouchiのJean-Paul Sartre et le tiers monde(1996)をひきつつ、サルトルが「黒いオルフェ」などの反植民…

チェスター・ハイムズの亡霊2

シリーズ7冊目の『夜の熱気の中で』(原著1966年、篠原慎訳、角川書店)になると、ハーレムの描写が少し変わって来る。麻薬の問題がクローズアップし、提示される問題が次第に深刻さを増してくる。1964年の公民権法の制定後、キング牧師の非暴力路線と一線…

チェスター・ハイムズの亡霊1

もはや旧聞に属しますが、6月8日の図書新聞(3113号)にダニー・ラフェリエールの『ニグロと疲れないでセックスする方法』の書評を書かせていただきました。よろしければご覧ください...。ところでラフェリエールを読んでいて気になったのがチェスター・…