別府のサルトリウス

 水曜日の夜にようやく『サルトリウス』の訳読を終え、木曜日に発表用のハンドアウトをつくり、金曜日の昼に羽田空港のエクセルホテル東急のロビーのPCで校正し、15:55発ANA197便で大分へ出発。まさに綱渡りの準備だった。台風の影響でよく揺れた。乱舞する雲のあいだに落ちてゆく太陽。ダイナミックな大気圏の風景。機内誌で別府観光の礎を築いた油屋熊八という面白そうな人物がいたことを知る。大分空港着17:30。急行バスに飛び乗って、とっぷりと暮れた高速を1時間走って大分駅へ。車中でアマゾンで買ったばかりの18世紀の黒人哲学者Antoine Guillaume Amoの著作に目を通す。『サルトリウス』に出てくる人物だ。駅前の果物屋さんでみかんを買って、JR日豊本線に乗車。駅で買った砂糖をまぶした小さなクロワッサンを3つ4つほおばっているうちに鶴崎駅に到着、下車。グッドイン西鶴崎に着いたのは19時をまわっていた。近くの焼鳥屋で立花先生を囲んで一杯飲みながら打ち合わせ(もした)。大分の焼鳥は旨い。
 翌日26日土曜日。良く晴れた。JRで別府大学駅へ。10時より別府大学にて日本フランス語圏文学研究会の第1回研究会、久しぶりに「研究発表」をした。タイトルは「サルトリウス、あるいは出会いの詩学」。会場の澤田先生、星埜先生、元木先生などから貴重なコメントをいただいた。ありがとうございます。九州まではるばるやってきた甲斐がありました。だらだらとしゃべってしまったけれど、ちゃんと論文にまとめようと思う。
 大成功の第1回研究会が終わると近くのうどん屋でみなさんで昼食会。そのあと発表メンバーで別府海浜砂湯へ。砂蒸し初体験。温泉でほどよく暖められた砂の重さがずっしりと気持ちいい。国東半島を眺めながらうたたね。温泉で砂を落としすっかりリラックスして海岸沿いを散歩する。別府まで歩こうと思ったが、うまい具合にやってきたバスに乗って別府駅へ。駅前ででっかい油屋熊八が上着の裾に小鬼をくっつけてお出迎え。街なかの喫茶店(たしか中村屋といった)でコーヒーを飲みながらニューズレター第2号の打ち合わせ(もした)。12月下旬に出そうということになった。みなさんの参加をお待ちしています! それにしてもメニューがコーヒーしかない喫茶店なんて一杯いくらだろうと戦々恐々だったが、450円だった。果たしてこれでやってけるのだろうかと逆に心配になった。夜は海鮮居酒屋で打ち上げ。だがやはり焼鳥も食った。しこたま酒を飲む。
 日曜日の朝10:15ANA194便で大分から羽田に戻った。行きとはうってかわって、凪いだ空の海をゆく。にぶく光る水面に悠然と散歩するちぎれ雲の影が点々と落ちて、それはしずかなしずかな航海だった。ひねもすのたりのたりかな。