Jacques Dumont氏講演会

昨日、今日と仕事のあとがんばって早稲田へ。グアドループ在住のアンティル大学教授、カリブ歴史学会会長を務めるジャック・デュモン氏のセミナーに参加する。昨晩は「フランス語圏カリブ海の現代史を振り返る−−文学・歴史・アイデンティティ」と題された大教室での講演。両大戦間あたりから90年代のクレオール宣言あたりまでを俯瞰された。歴史家ならではの冷静な視点に立ちつつ島嶼界の文学運動の展開を手際よく整理された講演と丁寧なパワポハンドアウトは、実に勉強になった。repèreとして1932年の『正当防衛』と40年代の『トロピック』が注目された。『トロピック』は昨年から輪読会で読み始めているが、ここのところルネ・メニルの重要性(naissance de notre art)を理解しつつある自分にとって、デュモン先生が「不当に無視されているルネ・メニルに注目すべきだ」と発言されたのは、まさにわが意を得たり、だった。セゼールやグリッサンのlitanie(デュモン氏)とも言えるテクストに比して、端正な哲学的ディスクールでありつつ、カリブ海の新しい美学への大胆な提言が展開されるメニルのテクストは注意して読んでいきたいものだ。今晩は8人ほどの研究会だったが、先生に各自が質問をしそれに答えていただくというかたちですすんだ。想像界を縦横無尽に駆使できる文学/できない歴史。しかしその往還は実にスリリングである。デュモン先生は大変情熱的かつ誰の意見にも真剣に耳を傾け答えてくれる紳士であった。研究会のあとは近くの中華料理屋で打ち上げ。充実した2日間だった。L'Amère patrie (fayard)を読もう。