2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

サン=ジョン・ペルス『風』

有田忠郎訳によるvents(1945)、chronique(1960)を読了した。翻訳者の解説にあるように、グアドループ出身のこの白人ベケによるアンティユ文学の存在は、たとえばグリッサンやコンデといった黒人クレオール作家たちにとって目の前に立ちはだかる「難問」であ…

出発――6人のアーティストによる旅

夕方、恵比寿の写真美術館を初めて訪れる。石川直樹さんのガイドによる、充実した写真展だった。尾仲浩二の小さなスナップの連続。放浪の旅へのこだわり。スライドショー「フランスの犬」は音楽のよさもともなって思わず引きつけられた。さわひらきの「small…

キム・ギドクのディープな午後

WC研、今日は韓国の金基徳を2本。『サマリア』(2004)と『受け取り人不明』(2001)。ベルリン映画祭銀熊賞(監督賞)を取った1本目はまぎれもない傑作である。ヨーロッパ旅行の資金稼ぎに売春する女子高生チェヨンとヨジン。チェヨンが性行為をし、ヨジンが…

世界中のアフリカ 2010

6時開演のところ15分ほど遅れて到着したら、新宿のNaked Loftはすでに超満員だった。50人ほどのキャパのところに100人以上がすし詰めとなり、旦啓介さんの朗読に耳を傾けていた。次が管さんのキンケイド『川底にて』朗読。中村和恵さんとの演劇的な朗読は生…

カフカ 『城』

ついに「城」には辿りつけないのだった。執筆中断によって、われわれはゲスルテッカーの家に入ったところでKとともに取り残されるのだ。「城」という官僚システムのまわりに抑圧されたまま蛇行する物語の群。核心部が隠蔽されたまま腹の探り合いが続くコミ…