ヴェルジェス・セミナー(2)

午後仕事を早目に切り上げて恵比寿に向かう。べルジェス・セミナー第2回は恵比寿の日仏会館にて17時半から始まった。ディスカッサントは立花英裕先生。まず『エメ・セゼールと世界の反抗』(ジェローム・セシル=オウフレ監督、2013年)の上映。1時間ほどのドキュメンタリーだが、セゼールの軌跡を辿る貴重な映像ですごく面白かった。1956年ソルボンヌの第1回黒人作家・芸術家国際会議の映像も流れ、これは有名なものらしいが僕は初見で、画面左隅にちょこっとグリッサンが映ってるのを発見して一人で盛り上がった。そのあと『エメ・セゼールと世界の植民地化』と題するセミナー。1時間ほどでそのあと立花先生のコメントとフロアとの質疑応答という展開だった。政治家と文学者という二足のわらじをはき続けたエメ・セゼールへの接近は、まさに近代資本主義と植民地支配が表裏一体であることを理解することに他ならない。エメ・セゼールという存在の苦悩はそのふたつの領域における抵抗の軌跡なのだ。海外県化後の「フランス」というシステムの枠内で十全な「市民権」を求める政治家としての戦い。その一方でアフリカから強制移住させられた奴隷黒人の被った修復不可能なダメージと歴史的文化的アイデンティティをヨーロッパに向けて告発する文学者としての戦い。セゼールはそのどちらにおいても決して譲らななかったのだった。ヨーロッパが一致団結して奴隷貿易と植民地政策に共犯関係を結んだ1713年のユトレヒト条約の重さを再認識した。植民地政策は現代の移民問題に接続する。今晩も多くのことを学んだ。つくるべきもの、未来に向けて必要なものは、忘却の回路ではなく記憶を持続させそこからラインを伸ばし続ける営みなのだ。