ヴェルジェス・セミナー(3)

午前中は江戸川総合文化センターで地区音を聴く。今回はステージに乗る余裕がなかったけど、みんな上手になった。感無量。今年はピアノもフルートもほとんど手つかずだった...。クリスマスコンサートには参加するぞ。
 午後から恵比寿へ。べルジェス・セミナー最終日に臨む。今宵は澤田直先生を司会に、海外県化後のフランス海外県の問題が取り上げられた。通訳なしでついていくのが大変だったが、濃密で明快なヴェルジェスさんのレクチャーから多くを学ぶ。「海外県」の要求は1848年の奴隷制廃止からすでに掲げられていた。1946年セゼールらの尽力でそれは成就するのだが、多くの問題がそれで解決されたわけではもちろんない。本土と同等の市民権を要求しようとすればフランスに「同化」するのかという問題にぶつかる。マルティニクの黒人たちの文化的なアイデンティティ、歴史、言語、それはとうていヨーロッパの文化と同一化できるものではない。ヴェルジェスさんは第3共和政の植民地主義同化政策を徹底的に批判する。セゼールの弱みはフランスの植民地主義を叩いたが「人権の国フランス」への攻撃を留保したところにある、とも指摘された。そうした植民地政策の結果として、現在の海外県経済の脆弱さ、公務員による利益の独占といった状況が生み出された。とくに後者は社会改革を妨げている元凶である。またマルティニク、グアドループ、ギュイヤンヌ、レユニオンといった地域はどれぞれ特殊性があり、ひとつに団結することはなかなかむずかしい。エリ・ドモタの活躍が記憶にあたらしい2009年グアドループに端を発したゼネスト後の状況は「何も解決されなかった」。土地や海の農薬汚染、麻薬、社会の荒廃。エコロジカルな問題が深刻である。時代は曲がり角にある。今までの分析装置ではない、新しい視点が必要であるという結びの言葉をぼくらは受け止めなければならないだろう。
 恵比寿ビールとボージョレで打ち上げ。竹富島の教科書問題、「内向き日本史」の問題点...至らぬフランス語だが、気取らないヴェルジェスさんとお話しできたのは貴重だった。