纐纈あや『祝の島』&ドリアン助川アルルカンシアター

 8月が終わってしまった。グリッサンに集中するつもりだったが、突然降ってきた日本語からフランス語と英語への事務翻訳仕事のために完全につぶれた。それでもキャンプを2回敢行、雨のなか根性のバーベキューと乗鞍岳登山(岐阜県平湯3泊)、熊よけ鈴を鳴らしながらのスリリングなニジマス釣り(群馬県嬬恋2泊)を楽しんだ。今日はゆく夏を惜しむべく白百合女子大学の文学・環境学会に出かけた。代表を務める管さんのあいさつのあと、纐纈あや監督『祝の島』(2010年、105分)の上映会。「ほうりのしま」と読む。瀬戸内海の小島、山口県熊毛郡上関町祝島を舞台に28年間にわたって上関原子力発電所の建設に反対する住民の姿と島の生活を追ったドキュメンタリー。10億円の補償金の受け取りを拒否して戦い続けてきた島の女性たち。しかし住民の高齢化によっていよいよそれを受け取らざるを得ない状況になっているのだと監督のコメント。東北の大震災のあとですら上関原発の建設は白紙にならなかったという事実を知ってショックを受けた。祝島に行こうと思った。
 続いて、ついに噂のドリアン助川氏のパフォーマンスを見ることができた。「ブカレストプノンペン〜フクシマ」と題されたスライドショーと語りと音楽。ベルリンの壁の崩壊、チェコの市民革命、チャウシェスク失脚後のルーマニア、抵抗を続けるポルポト派が潜伏するカンボジア...激動する世界に飛び込んでいった吟遊詩人の旅。エネルギッシュな語りの芸。折りたたみ自転車で東京から平泉まで、芭蕉の「奥の細道」をガイガー・カウンターで放射線量を測定しながら旅した物語はすごいインパクトだった。日光を過ぎるあたりから放射線量が上がって行く。深刻なレポートだった。
 ふたつとも、すべての高校生に見せたいと思った。