スーザン・フィリップスとの出会い

 8月17日、北海道旅行の初日、新千歳空港で「札幌国際芸術祭」のポスターを見て彼女が参加していることを思い出し、支笏湖を訪れたあと、札幌芸術の森にかけつけ、スーザン・フィリップスのサウンドインスタレーションカッコウの巣」(2011)を見る/聞く。あまりのすばらしさに茫然とした。彼女自身の声で録音された中世イングランドのカノン「夏は来たりぬ」が、アカエゾマツを植樹し割石や黒御影石を配した一辺36mの正方形の空間《北斗曼荼羅》のなか、木の幹に設置された複数のスピーカーから流れてくる。そのクオリティの高さ(歌のうまさとかサウンドクオリティの高さなどとは無縁の)に仰天した。地下鉄の通路や公園など公共空間で聴衆との偶然の出会いを設定するスーザンのインスタレーション。彼女の意図のとおり、出会いはまさに不意打ちであった。そして自然をアート(芸術)に変えるアート(技術)についてぼんやり考えた。そのアートは自然/環境にぼくらの目を向けるものなのだろう。札幌のシンボル、カッコウを意識し、森のなかの鳥たちの生活を気遣うスーザンの作品は環境への配慮に満ち、空間をあざやかに立ちあげ、人を自然へと導いていく。Nature is more beautiful than art.