森のムラブリ!

車を飛ばして横浜シネマリンへ。3月の渋谷UPLINKでの上映を見逃した『森のムラブリ』(金子游監督、2019年)をついに観る! すばらしかった。(敢えて言えば、85分はちょっと短かった。)若き言語学者伊藤雄馬氏が、タイとラオスに狩猟採集民ムラブリ族を訪ねる。タイのムラブリは定住しているがラオスのムラブリは未だ森を遊動する生活を維持している。「蓄える」文化を持たず、食料を探す以外は森の居住地でごろごろして過ごすラオスのムラブリの生活が後期資本主義のなかで生かされているわれわれに与えるインパクトは計り知れない。定住民と物々交換をおこない、山間部に隠れて暮らす「森のムラブリ」たちの言葉はささやきのように流れ、音楽のようにイントネーションが豊かだ。そんな彼らの生活にも、スマホなどさまざまな現代文明が入り込んでいる。分断されお互いを「人食い」とけん制し合うムラブリの3つのグループを、伊藤さんはつなげようと試みる。それが学問的営為を越える介入行為ではないかといった議論に僕はまったく関心はない。それは詩学的行為といってもいいかもしれない。分析し、紐帯をつくり、創造へ向かうあらゆる行為を詩学(ポイエーシス)と呼ぼう。

横浜に向かう途中、恐ろしいスコールに遭った。帰る途中、クリアに晴れ渡った夕暮れの空に見とれた。