PARADISE TEMPLE 管啓次郎詩集×吉江淳写真展

蔵前のiwao galleryでPARADISE TEMPLEの表紙を飾る吉江淳さんの写真展を見る。PARADISE TEMPLEの表紙を見た時、写真ではなく絵だと思った。絵画的な質感がすごく新鮮だった。吉江さんの写真に写し出される、街と自然のあいだの中途半端な場所はどこかアイデンティティを欠いている。打ち捨てられ、美しくもなく、どこにでもあり、生活の垢にまみれて静まり返ったそれらの無人の風景に僕は惹きつけられる。誰も目を留めず通り過ぎる場所にしばし佇んで、聖性ゼロの生の刻印をそこに読み取ろうとする。そんな場所を求めてふらふらと無為な旅をしたくなる。そんな場所は世界の裂け目なのかもしれない。

『川世界』。川岸が好きだ。川岸は生成流転の場所。大水が出れば、川岸の風景は一変する。ゴミや流木が流着してかつての表情は一挙に刷新される。川の水はいつも力強く方向を指し示すエネルギーである一方、そのエネルギーに翻弄される川岸はいつも不定形で不安定である。おだやかなヘテロトピアとして世界の縁をかたちづくる川岸に座ると、日常からかすかに離脱するように感じるのだ。