李禹煥展

六本木、国立新美術館でLee Ufan展を見る。もの派は基本的に好きである。李さんの作品は立体作品では石、鉄板、アクリル、木材などをシンプルに組み合わせ、自然と人工のはざまに見る者を連れていく。庭石のような石は白い矩形の空間のなかで鉄板やガラス板に乗せられ、両者の関係は作品によって微妙に変化する。ミニマルでストイックなそれらの関係項の位置の変化を見るのは楽しい。美術作品というより庭を眺めているような気がする。スレートの破片や砂利を敷き詰めた部屋を歩くと、石が擦れる音を聞く。ぼくが気に入ったのは「関係項ーー星の影」(2014/2022)。白い部屋に裸電球がぶら下がり、そこに置かれた石の影ができる。なぜかジャン・ピエール・レイノーの白いコンテナを思い出す。だがレイノーの白いタイルの病院のような冷たさとは異なり、李の白い空間は哲学的だ。ルチオ・フォンタナのように。9月に竹橋で見たゲルハルト・リヒターのフォト・ペインティングや現代技術と向き合う重厚でダイナミックな仕事とはまさに対極的な静かな世界である。リヒターは加筆する。李は置く。リヒターは批判する。李は空間を無限へと拓く。