アーネスト・サトウ展

 竹芝のギャラリー916でのY.Ernest Satow展、終了ぎりぎりで間に合った。息をのむすばらしさだった。港湾地域の大きな倉庫ビルの6階にあるギャラリー916。広々とした空間の壁面は白いペンキで塗られている。入口から入ってまず視線は、部屋の奥の真正面の壁面に釘付けになる。そこだけが汚れた灰色のまま塗り残され、無骨な工業用サッシにはめ込まれた曇りガラスが夕方の外光を受けて浮かび上がる。周囲とのコントラストは余りにも見事であり、それがすでにひとつの作品としてのインパクトを放っている。
 モノクロのスティルががらんとした空間に点々と展示されている。鳥のはばたき、スーラージュの墨絵のようなもの、繊細なエッチングのようなもの、田中角栄大鵬などのポートレート...。作品と展示会場はぴったりマッチしていた。とくに雪景色のリヴァーサイド・パークが素敵だった。隅に置かれた椅子に腰かけてがらんとした空間のひんやりした空気を吸い込む。休みなしの2週間労働のあいだの、しばしの休憩。
 アーネスト・サトウは1927年、東京の本郷で日本人の父とアメリカ人の母とのあいだに生れ、アメリカの大学で音楽と美術を学んだあと写真を始め、ライフ誌の特派員として1962年に来日。その後京都市美術大学(現京都市立芸術大学)で写真やアメリカ美術史を教えた。