サン=サーンスと北アフリカ

 ようやく春休みがみえてきた。今日は朝から人間ドック。ここ1,2ヶ月本職の仕事に忙殺されへろへろだったのできっと結果は芳しくなかろうと思っていたが、あにはからんや、ここ3年間で一番よい数字じゃないか(まあ血圧の薬は飲んでるけどね)! 問題ありませんよと丸ぽちゃの笑顔のすてきな女医さんからうれしい診断をいただき、おまけに予定よりはやく12時前に検査終了。よーし。気合を入れて病院から吉祥寺までバスに乗らずに35分歩き、そこからJRで錦糸町へ。すみだトリフォニー・ホールでユーゲント・フィルハーモカーの定演を聴く。グリッサン輪読会の若きメンバーMくんがチェロで参加しているのだ。ラヴェルの「ラ・ヴァルス」「マ・メール・ロア」にサン=サーンスの第3交響曲というオール・フレンチ・プログラム。オルガン付のゴージャズなシンフォニーは迫力満点。端正な熱演でした。
 夕方からは赤坂区民センターで「北アフリカセミナー」。渡邊祥子さんによるアルジェリアナショナリズムについてのレクチャーで一筋縄ではいかないアルジェリアアイデンティティの特徴を把握する。後藤絵美さんによるムハンマド・ガーリーにフォーカスした「イスラム主義」の女性観についてのケース・スタディも面白かった。ヴェール着用の習慣もここ半世紀でずいぶん変化したことを知る(半世紀前は今ほど着用されていなかったことがカイロ大学内でのスナップショットから一目瞭然)。イスラーム主義による女性への「抑圧」の様相も時代とともに変動する。なんでもステレオタイプで決めてかかるよりも現実の可変性に目を向けると視野の奥行きがひろがる。それから鵜戸くんの軽妙なおしゃべりでマグレブ文学の概観。ずいぶんいろいろ訳されているんだなあ。いくつかの作品にチャレンジしよう。社会学的なディスクールでは見えないところを文学は照らす。社会学と文学は相関的なのだ。こうしたコンフェランスを聴いていると、両者のコントラストと相補性が鮮明に浮上する。文学の可能性を再認識しよう。
 久しぶりによく動いた一日。電車のなかと夜はこのところずっとダニー・ラフェリエール。