大黒屋にゆく

 勤め先の仕事が忙しくなる夏が近づいてきた。恒例の部署の飲み会。昨年は浅草の「駒形どじょう」だったが、今年は京成八幡の「大黒屋」である。晩年の永井荷風が死ぬ前日まで、毎日かつ丼を食って酒を1合飲んでいたお店である。料理はどれもおいしかった。さすがにしこたまビールを飲んだ後かつ丼には手が出ず、かわりに鰻を注文した(あまり変わりないか)。実家には父の遺した荷風全集がほこりをかぶっている。ぼくはついに1冊も手をのばさなかった。これを機会に『ふらんす物語』くらいは読んでみるかな。荷風はさぞ長い間フランスに滞在したのだろうと思いきや、実際は10カ月ほどだったらしい。