田中一村展 奄美の光 魂の絵画

 東京都美術館にて妻と田中一村展を観る。一村の作品と対面するのは、2017年に奄美大島田中一村記念館を訪れて以来である。おそらく没後最大の回顧展ではないだろうか。1908年に栃木県に生まれ、南画家としてキャリアをスタートさせた一村8才の「蛤図」に驚嘆した。まさに神童である。東京美術学校を2か月で退学、中央画壇に認められず農作業をしたり染色工として働きながら描き続け、奄美大島の庵で69歳の生涯を閉じる一村の軌跡を追った。火曜日というのに大混雑の会場。「初夏の海に赤翡翠」、「アダンの海辺」、「不喰芋と蘇鐵」といった晩年の傑作が展示されているコーナーでは誰もが感嘆の声を上げた。画家は一生をかけてこの高みへの到達を果たしたのだった。長大な交響曲のクライマックスを聴いているようだった。

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 今年の展覧会ベスト3は、「シュルレアリスムと日本展」(板橋区立美術館、3月)、「北川民次 メキシコから日本へ」(世田谷美術館、9月)と今日の田中一村展。