アンドレ・ブルトンの『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』発刊から100年の今年、日本におけるシュルレアリスムの展開を一望するすばらしい企画展を板橋区立美術館で観た。大好きな古賀春江、三岸好太郎、北脇昇。福沢一郎の「他人の恋」の構図はすごい。座礁した船にも見える杉全直の「跛行」はカッコいい。日本のシュルレアリストたちにダリがいかに大きな影響を与えたのかがわかる。うら寂しい矢崎博信の「時雨と猿」のインパクト。今回の展覧会で特筆すべきは図録カタログである。日本各地におけるシュルレアリスムの展開、「日本的なるもの」とシュルレアリスムの絡み合い、政治と芸術運動の緊張関係などについて充実した論考を読むことができる―――福沢一郎と瀧口修造が治安維持法違反の疑いで検挙されたのは1941年だった。日本にシュルレアリスムを導入したのが詩人西脇順三郎だったことを初めて知った。『Ambarvalia』の再読を開始した。