管啓次郎 『斜線の旅』

もしあなたが旅が好きなら、迷うことなくこの本を開いてみていいと思う。もしあなたが観光旅行の虚しさを密かに感じているとしたら、きっとこの本はあなたにサジェスチョンを与えてくれると思う。化石燃料をまき散らすことの上に成立する「外国旅行」。でも旅出たずにはいられない。だって僕らは日々の暮らしの単調な反復のうちに「どこかにマブイ(soul)を落として、自分でも気付かないうちにゾンビ化しているのかもしれない」んだもの。旅についての夢と覚醒、そしてブルーズ。『本は読めないものだから心配するな』を凌駕する、管啓次郎の紛れもない最高の旅語り文集である。