老人と海

WC研のプレゼンのために久々にヘミングウェイの『老人と海』を読み返した。福田恒存のあとがきが時代を感じさせて面白かった。「米文学」なんてくくりは今は昔、まして「ヨーロッパ文学に比べて米文学の人間描写の物足りなさ」などをうんぬんする時代(?)からも遥かに時は流れた。「人間」は西欧人からようやくその外へと広がり、環境や自然や動物界へと文学のフォーカスは広がった。それにしても拡大していってどこに行くのだろう。サンチャゴが骨だけになった大カジキとともに帰還した翌朝、粗末なあばら家で寝ている老漁師の両手の傷をみて少年は声を立てて泣き始める。そのくだりがとてもいい。「おれには運がついていない」とさらりと流すサンチャゴの台詞も、なんてことはないのだが、心にしみる。それでも彼は漁に出るのだ。