笹久保伸×AYUO

 しばらく滞留していたアイヌモシリから一気にペルー・アンデスの高地に吹き飛ばされた。渋谷公園通りクラシックスでのライブの第1部。ペルーに長く滞在しペルー音楽の専門家であるギタリスト笹久保伸とヴォーカルIrma Osnoのすばらしいパフォーマンス。Irmaの歌うペルー南部アヤクチョの民謡や舞曲のなんと生命感にあふれることか。アンデスから遠く離れた東京の、自然から遮断された渋谷のビルの地下のなかにアヤクチョの人々の生活のエネルギーがビンビンに伝わって来ることの奇蹟! またボリビアカーニヴァルの歌を演奏するときに笹久保さんが弾いた「コンコータ」と呼ばれる複弦5コースの楽器は、板を張り合わせるボンドがはみ出しているような安っぽい代物なのだが、実にいい音で鳴る。南米にはスペインから持ち込まれたギターなどがさまざまに現地適応しているのだ。
 第2部はAyuoさんのオリジナル。デュラスにちなんだ1曲目の前に広島原爆投下直後の人々の姿を写した凄惨な映像(『ヒロシマ・モナムール』)が流れた。2部の曲の多くは、今回の原発事故へのプロテスト的な色彩が濃い。最後の武満徹のワルツ「他人の顔」は笹窪さんのギター、AYUOさんのブズーキをはじめ、ヴァイオリン、ベース、パーカッション(立岩潤三さん、気合入ってた!)の大インプロビゼーション合戦。ジャジーだった。こういうのが好きである。