フランシス・ベーコン展

すべりこみセーフ。竹橋の東京国立近代美術館へ。たしか1983年の展覧会も見てるはずだ。ベーコンは1909年にダブリンに生まれた。インテリア・デザイナーとしてのキャリアを積んだのち画家として立つ。1945年頃までの作品は力不足であるとして自ら極力破棄したという。ロンドンを拠点に活躍。同性愛者であり若いころから喘息に苦しんだ。晩年、スペインの若い恋人ホセ・カペッロに会うためにマドリッドに向かい、肺炎で入院、1992年に死去した。

ひしゃげた顔、ちぎれた肉片のような身体、断末魔のような叫び...ベーコン独特の恐怖のイメージは1945‐46年の《人物像習作Ⅱ》にすでに十分にあらわれている。この作品が大好きだ。それから50年代の《教皇》シリーズに顕著な画面に縦に走るライン。それによって醸し出される「刹那」。この切迫感も好きだ。頭部を切り離された肉塊は転がりうごめく。そのグロテスクな解体と運動は必ず室内でとりおこなわれ、三幅対の秩序のなかに収められる。ベーコンがしるした身体の動きは強烈なインパクトを放つ。土方巽ウィリアム・フォーサイスはそれに触発されて踊った。とくにフォーサイスのパフォーマンス映像は興味深かった。ポエジーが表現形式の敷居を越えてゆくスリル。