『アフリカ・パラダイス』

 「シネマアフリカ2013」が先週の金曜日から始まった。このところいろいろあって、てんてこまいの毎日だが、今日の午後はなんとか時間を空けて渋谷のオーディトリアムに向かう。18時からシルベストル・アムス監督の『アフリカ・パラダイス』(2006)を観る。ベナン・フランス合同制作。皮肉の効いた近未来SFコメディ。めちゃくちゃ面白かった。時は西暦2033年超大国「アフリカ共和国」が繁栄をきわめ、ヨーロッパは没落してしまった。貧しい欧州人たちは移民となってアフリカに押し寄せている。主人公のフランス人カップルはアフリカに密入国を試みる...。立場を反転させることで現代の移民問題の核心部が鮮やかに照らし出される。でもあえて言えば、コメディというにはシリアスすぎる要素がありすぎ、素直に笑えないところもある。あるいは問題のシリアスさとコメディ的要素のちぐはぐさも(ポーリーヌに心を寄せる黒人政治家オリビエのコメディアン的振舞いとか)。おっと、そんな感想はまじめすぎるか。それから、場所がベナンとはいえ、ポーリーヌが家政婦として働く政治家の豪邸の様子など、あくまでフランス文化の内側といった印象が強い。それもまたイロニーのひとつか。いずれにせよ、インパクト十分な傑作でした。上映終了後、ベナンの文化省の方のスピーチがあった。日本とベナンとの映画の共同制作を試みたり、それによる文化交流を盛んにしたいとのこと。ベナンに行ってみたいなあ。