ミュシャ展

チケットを頂いたので家族でミュシャ展を見に六本木ヒルズ52階の森アーツセンターギャラリーへ出かけた。自らすすんで足を踏み入れることの決してないエリアである。しかも最終日前日の土曜日の夕方とあって、芋を洗う大混雑にいささかうんざり。しかし充実した展覧会だった。1860年に生まれ1939年に逝去したモラヴィアチェコスロバキア)のグラフィック・デザイナー、アルフォンス・ミュシャアール・ヌーヴォーの代表的な作家であり、何と言ってもフランスの大女優サラ・ベルナールのポスターで有名だ。神智学にも傾倒したスラブの装飾的幻視者の作風は、たとえばアンニュイな生活感漂うロートレックのリアリズムと対極的な神秘感に包まれている。描かれる顔立ちは日本人にも親しみやすい輪郭を示しているといえるだろう。スメタナの『わが祖国』を聴いて愛国心を掻き立てられ、連作大作「スラヴ叙事詩」を制作した。ポスターや挿絵画家としてのイメージが強かったミュシャの旺盛で多彩な制作の軌跡に触れて認識を新たにした。しかしもう少しゆっくり見たかったな。