ブリューゲル版画の世界

図書館に調べ物に行った帰り、今日までだと気がついて慌ててBunkamuraへ。最終日なのでごった返している。油絵に比べて版画は目を近づけてじっくり見なければならないので一枚の作品あたりの観賞できる人数が限られ、なかなか進まずうんざりする。かつてLPがCDに切り替わったあと、中古屋で小さなプラスチックのCDケースの山に大勢で群がってがちゃがちゃやるのがしんどくなったのと似た状況だ(もう今では中古屋まわりなどする暇はないが)。16世紀に活躍したピーテル・ブリューゲル。ベルギー王立図書館所蔵のコレクション。イタリア旅行から生まれたアルプスのランドスケープが新鮮。そして人間社会をグロテスクに風刺した幻想的な寓意画の数々。「悪魔はボスの形態に似ている」と言われたヒエロニムス・ボスのタッチで描いた有名な『聖アントニウスの誘惑』。こんな面白い化け物たちに取り巻かれたら、下手に我慢しないでそいつらと一緒に戯れた方がどれだけ面白かろうに。『7つの原罪』シリーズの解説のなかで「ビールを鯨飲する男」という一節が目にとまる。「鯨飲」ていかにも豪快だなあ。ビールのくじらのみ。