ヘルツォーク 『忘れられた夢の記憶』

 今日のWC研は充実していた。まず管さんのナビでヘルツォークの新作『忘れられた夢の記憶』(Werner Herzog; Cave of Forgotten Dreams, 2010)をみる。3Dではなかったが英語字幕。南仏のショーヴェ洞窟で1994年に発見された3万2千年前の最古の壁画をめぐるドキュメンタリー。ラスコーより古いが最近アルタミラはもっと古いことが判明したらしい。とにかく、白く輝く鍾乳洞のなかに鮮やかに描かれた馬やマンモスなどの動物の線描画の見事さに息をのむ。アンドレ・ルロワ=グーランが生きていたら、なんとコメントしただろうか。洞窟内部もさることながら、リモコン・ヘリコプターで撮られたとおぼしきアルデンシュの岩山、河川、灌木帯などのスケール感あふれる渓谷美もすばらしい。最初のカットから一気に引きこまれた。ホモ・サピエンスと呼ばれる現在の人間より前に、ホモ・スピリチュアルという人間が存在していたのだという、フィルムの最後のほうでしゃべった研究者の言葉が印象的だった。動物を描くことで、人間は動物との差異を確認しつつ動物と相互浸透しながら存在していたことが壁画から感じ取られる、とその研究者は述べる。それが単なるファンタジーかどうか、それは壁画と向き合う者の感受性次第だろう。最近ルドルフ・シュタイナーの音楽論を読んでいるせいか、妙に心に残った。
 後半はAyuoさんのナビと詳細なレクチャー付きで『トリスタンとイゾルデ』と『ルル』のオペラ映像をみて多くを学ぶ。これについてはまた後日触れたい。