『禁じられた歌声』を観る

ユーロスペースイスラム映画祭で話題の『禁じられた歌声』を観る。監督のアブデラマン・シサコはモーリタニア出身。トゥアレグ族のトヤと彼女の両親はティンブクトゥ近くの街でテントで暮らす。街はあるときジハーディストに占拠され、生活は一変する。同じイスラムの民にもかかわらず、武器を持つ者たちの厳格な「法(シャティア)」がひとつの暴力として現地の「法」を支配し、人々を裁く。音楽と愛が禁じられる。フランス語、英語、アラビア語、タマシェク語などが飛び交う多言語世界。『トンブクトゥウッドストック』はドキュメンタリーだったが、これはフィクション。しかしわれわれが向き合わなければならない現実がここに提示されている。なんと悲痛でしかしなんと美しい映像。沙漠の沈黙のなかから立ち上る音楽は甘美で強靭である。音楽の根源的な力があふれている。極彩色の着物をまとい、鶏を連れて侵入者をものともしない一人の女性はハイチから流れてきたブードゥーの民であろうか。彼女はイスラム共同体の外に居る。サハラ砂漠の多言語・多文化空間の悲劇の物語をかみしめる。
映画のあと、なぜかどじょうが食いたくなり、連れ合いと駒形どじょうへ。店の場所が変わっていてたどり着くのに苦労した。