東京マラソンのあいだ天気は大荒れだったが、午後になって青空が現れた。車で久々に笹目橋を渡り荒川のほとりで夕昏を迎えた。乱舞する雲間に太陽は重そうに沈んでゆく。ダイナミックな空間の広がり。ぼくはこの場所を何度となく訪れた。寒い朝に、猛烈に暑い夏の午後に、霧にかすむ真夜中に。その川はインダス川、イムジン川、セントローレンス川へと変容し、記憶と空想の地へと導く水路となった。海と川が異なるのは、海の無限の広がりは想像力を途方もなく撹乱するのに対して、川は常に方向を強烈に示すという点だ。上流と下流。水の流れの傍らに佇むと、いつもふたつの方向に向かって想像の糸は果てしなく伸びていく。そしていつも、とても中途半端なパサージュの途上にいる自分を思う。心地よさと空虚さが交錯するひとつの場所。