オラショ

明治大学和泉校舎にて、コンゴ出身のカトリック司祭・宗教人類学者であるムシン・ロジェ・ヴァンジラ氏による「かくれキリシタン」についての講義を聴く。1587年豊臣秀吉による布教禁止令に端を発し1873年に信教の自由が認められるまでのキリスト教の弾圧期に、信者たちは神社・仏教の外観でカモフラージュしながら教会を存続させた。長崎県外海(そとめ)黒崎町の枯松神社は、そうしたキリシタン神社のひとつである。信教の自由を得たのちもなおキリスト教に合流せずに自分たちの伝統を捨てなかったかくれキリシタンラテン語スペイン語典礼が日本語に溶け込んだオラショ(祈り)を唱え、仏教や土地の習俗とまじりあい、「キリスト教」と一線を画すそのシンクレティスムは、まぎれもなく文化的クレオール化の一例といえるだろう。大きな感慨を覚えたのは、1981年にヨハネ・パウロ2世が来日した際、彼らがローマ法王の祝福を授かることに強いためらいを感じたということ。人の生きるさまざまな場所には、その場所が荷う歴史と切り離しえない宗教の生きた姿がある。とてもブルージーだ。