ボルゲーゼ美術館展

 東京都美術館ボルゲーゼ美術館展を見る。イタリア17世紀を代表する名門貴族シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿を中心として、ボルゲーゼ家の別荘に集められた美術品は、世界のプライベート・コレクションの頂点のひとつだそうだ。呼び物は何といってもラファエロの『一角獣を抱く貴婦人』(a1506)。1930代に他者による加筆が判明し、一角獣を抱く本来の姿が修復された。素晴らしい作品だった。それともうひとつ気になったのがジローラモ・ダ・トレヴィーゾ・イル・ジョーヴァネ作といわれる『眠れるヴィーナス』(a1520−23)。明らかに頭部が肢体に比べて小さく、その結果豊穣な身体が強調され、ちょっとブラジルのタルシラなんかを思い出させるほどのシュールなデフォルメ感があって新鮮だった。身体をかすかに覆う薄絹の金の縁取りや、背景に1本だけ透き通るように浮き出る樹木もはっとするような神秘的な効果を醸し出していた。それにしても生徒たちの卒業制作展が無事に始まってほっとする。帰宅して、どっと疲れがでた。自分は何をしたわけでもないのに。