技術とモノについて

 WC研。管さんのナビで、ロジャー・ドナルドソン監督、アンソニー・ホプキンス主演、ニュージーランドアメリカ合作の『世界最速のインディアン』(2005)を観る。すごく面白かった。舞台は1960年代、1920年代に製造されたオートバイ「インディアン・スカウト」をチューン・アップして世界最高速度記録を達成したニュージーランドに住むクレージーなスピード狂老人、バート・マンローの物語。実話に基づいているそうだ。『バック・トゥー・ザ・フューチャー』、『パリ・テキサス』、『シービスケット』...いろんな映画の断片が頭をよぎる。このフィルムには「いい人」しか出てこない。全篇が性善説に彩られた、世界はこんなに素敵なところなんだと思わせる作品だった。そして無条件にすばらしい荒野の風景。
 一見無謀にみえるバート老人の冒険、でもそれは、実はメカニックに対する高度な知識と技術に裏打ちされた用意周到なチャレンジ。だからこそ彼は勝負に出られるわけだ。そしてバイクへの愛。モノは人がそれにどのようにかかわるかによって、姿を変える。人が使いこなすモノは、ただの非身体的存在ではない。それは身体の一部になる。身の回りにあるすべてのモノはそうだ。それとどうかかわるか、どのくらいの時間をそれと過ごすか、どのくらいそれが馴染み深いものになるかによって、モノはその存在の位相を変える。2003年のハワイで買ったぼろぼろのskechers(靴底が剥がれてきたので接着剤でくっつけて履いてる)、もう10年近く修理しながら使ってるsonyのMDプレイヤー、僕のまわりにも身体の一部になったモノが少しある。