空気

 午前中駒澤公園へ。息子は父親と「大人のサイクリングコース」を走るのを楽しみにしていたのだが、到着してみるとなんと「世田谷ハーフマラソン」なる大会が催されていて、公園を周遊するサイクリングコースは本日閉鎖。子猿はしばし茫然と立ちつくしたが、気を取り直してチリリンコースを爆走して憂さを晴らしていた。午後は駒場に出かけたが、駅に降り立つと何と駒場祭。当然図書館は閉鎖...。どうも今日は調子が悪い。仕方なく勤め先のデスクで仕事をする。夕方、歩いて松濤の観世能楽堂へ。元同僚のSさんの仕舞を観る。演目は『遊行柳』。奥州へ下る遊行僧が白河の関を過ぎたあたりで老翁の姿をした朽木の柳の精と出会う...といった筋立て。古今集に収められた西行の歌「道のべに清水流るる柳かげ、しばしとてこそたちどまりつれ」に基づく。幽玄で渋い舞である。Sさんの凛とした立ち姿は圧倒的で、即座にあたりの空気が引き締まる。はねた後卒業生を含めた何人かでドゥマゴで夕食。同席した生け花の先生が、花は風をおこさなければだめ、と言われたことばが印象的だった。そのあと、とあるバーで酒を飲んで帰る。バーテンダーに勧められ、ジョニーウォーカーブルーラベルを飲んでみた。フルーティでコクがある。シングル・モルトはどうもアルコール臭くて苦手なのだが、こいつは絶妙のブレンド。最高級品。旨かった。