ドガ展

 10時すぎに横浜美術館に来たら、もう長蛇の列なのに驚いた。ドガって結構地味な画家だと思っていただけに意外である。こんなに混んでいるのはみんなAPECを避けてたからなのか? 高齢のご婦人の姿が目立つ。横浜美術館、できた当時は草っぱらの真ん中にぽつんと立っていたものだ。入り口前の大きな水盤にしつらえられた花の植え込みが目を引く。ときどき噴水が吹きあがる。マングローブ林を思い出す。中に入ると、エントランスから1階にかけてはプチ・オルセー。バブリーな建物だ。
 ドガ(1834-1917)は室内画家である。有名な「エトワール」の他には「綿花取引所の人々(ニューオリンズ)」、「メニル=ユベールの屋敷のビリヤード室」などがよかった。最晩年、視力が衰えてからてがけたブロンズ彫刻が興味深かった。本当にドガはバレエやオペラが好きだったのだと思う。オスマン男爵によるパリ都市改造のころ、ドガは日常生活、生活の瞬間を描いた。19世紀半ばのパリを撮ったナダールらの写真展が併設されていてこちらも実に面白い。ドガが写真にこだわったのがよくわかる。若いころアングルから「君は線を描きなさい」と言われたという。ドガは線描の画家である。でも今の自分には室内風景や人物描写よりも自然のほうがいいかな...。
 帰りにそごう美術館で手塚雄二の日本画を観て帰る。たしかに美しい。静寂。