太平洋のまなざし

管啓次郎さんコーディネートのすごく刺激的な講演会を聴く。マーシャル諸島共和国出身のグレッグ・ドボルザークさんによる「日本列島と"ミクロネシア"」、そして今福龍太さんとの対談。なんといってもドボルザークという姓にひきつけられる。どうしたってチェコ出身のあの作曲家アントニン・ドボルザークを思い出すではないか。アントニンは旧大陸から新大陸アメリカにしばし滞在し東欧のメロディに「新世界」の香りを漂わせたが、グレッグさんは「太平洋」のまんなかの小島から東アジアの列島国にやってきて両者の関係とその広がりを語った。太平洋にうかぶ島々と環礁。死の島ビキニ環礁もそこにある。島々がみんなつながるatollの想像力を開拓する試み。珊瑚の記憶。日本列島をもう一度その穏やかなる大海のなかに浸してみるがいい。トンガ人の哲学者(というより比較詩学者と呼ぶべきか)エペリハウォファの"our sea of Islands"というコンセプト。グリッサンが大西洋から発想した詩学は太平洋にも広がっているのだ。