グリッサン追悼6

エドゥアールへ 
           

マリー・ドゥ・ラ・メール
マリー・ドゥ・ラ・メール


海のざわめきが語った
父の脅威と父の不在のあいだにゆれながら


マリー・ドゥ・ラ・メール
マリー・ドゥ・ラ・メール


不可能な水平線の彼方へ向かう眼差しの果てに
蒸発する蜃気楼の城閣


マリー・ドゥ・ラ・メール
マリー・ドゥ・ラ・メール


流れのほとりにて疾走してゆくものたちを
憂いの眼差しで追うシダの群落


マリー・ドゥ・ラ・メール
マリー・ドゥ・ラ・メール


そのときはじめて人から与えられた方向を見失い
無限の広がりのなかでとまどう河口の水たち


マリー・ドゥ・ラ・メール


あなたの緩やかなオスティナートのメロディは
知らぬ間に、はるかかなたの浜辺で波に洗われる
無数の小石を震わせ、石たちはかすかに
磁気を帯びる