シンポジウム「火山のめぐみ」

14時を少し遅刻して明治大学中野キャンパスへ。充実したシンポジウムだった。赤阪友昭さんの発表は、比較神話学の観点から、古事記とハワイの創世神話の類似点を「火山」のトポスから探索。イザナミイザナギの産んだ火の神カグツチに注目。黄泉の国の黄色とはすなわち硫黄。カグツチは火山の相者である。前期縄文人を滅ぼしたのは火山の噴火であった。大辻都さんはフラの詩におけるペレ神話に着目。女神ペレの住処は火山であるハワイ島である。フラという舞踏に体現される火山の叙事詩。2017年、ハワイ島ヒロで行われたメリーモナーク・フェスティバルの優勝者のフラ・ダンスのすばらしさ! 井上昭洋さんのレクチャーで、ハワイの集落単位アフプアアの形態を学ぶ。各集落は短冊状に区分けされ、山から海までを含んでいる。それが生活空間の基礎なのだ。松田法子さんのアイスランドの映像と詩的解説がそれに続く。バイキングが定住した氷雪の島。そこにへばりつくようにかろうじて広がる草原。ぼくが大好きな風景だ。地熱発電の土地。穴熊の巣のようなロング・ハウス。ウィリアム・モリスを魅了した荒野を旅してみたい。大川景子さんの映像作品は、ドリアン助川さんがイタリアから仕入れたトマトの種を三宅島で育ててもらう物語。噴火で被災した土地をどう復興するか、という問題に対する鮮やかな解答例をみた感じがする。がんばれ、菊池農園。最後は写真家津田直さんのフィリピン、アエタ族に密着したフィールド・レポート。物々交換で暮らすアエタ族が1991年のピナツボ火山の噴火で被災した。火山山麓の土地に残るか、移住するか。火山灰に覆われた土地でもバナナは育った。人々はそこで自分たちが生かされていることを実感する。土地に生きることの意味を津田さんのレポートは伝えた。総合司会の管啓次郎さんが提唱する「比較詩学」の射程の豊かさを実感する一夜であった。さまざまフィールドを横断する詩的な思考(つまり自由、ということだ)がいかに生産的でインパクトのあるディスクールを実現するかを目の当たりにした。自然のエレメントをいかに語るか。比較詩学が差し出す語りの束。自由な発想を実現する具体的な場。