城南島に三島喜美代を見に行く

東京湾に浮かぶ城南島になぜか最近縁がある。最初に訪れたのは6月中旬。鮫洲試験場で免許更新の手続きを済ませたあと、せっかくここまで来たのだから海を見に行こうと適当に走っていたら、城南島に入っていた。広い道路は閑散としていて物流倉庫が立ち並ぶ殺風景な場所だが、こういう雰囲気は好きである。道路案内標識によれば、ここから海底トンネルとゲートブリッジで若洲までつながっている。へえ、そうなんだ。Uが自転車に乗れるようになった頃、若洲海浜公園のサイクリング・コースに連れて行ったことがあった。その頃ゲートブリッジはまだ完成していなかった。なんとなく行ってみたくなって、1週間ほどして、ふたたび城南島へ向かった。くだんの海底トンネルで若洲に抜け、若洲海浜公園を散歩した。10年前の感傷にふけりながら5kmほどのコースを今回は歩いた。点々と咲き残るワイルドフラワーの淡いピンク色の花が海風に揺れていた。

さあ、もう来ないだろう、さよなら城南島、と思っていたら、NHK日曜美術館で三島喜美代特集を見て、ART FACTORY城南島という美術館に三島さんの常設展示があることを知り、みたび出かけることとなった。古新聞やゴミ、廃棄物をモチーフにそれらを陶芸として造形する斬新なアプローチ。膨大な新聞紙の束(ポリエステルのイミテーション)の迷路や、紙面の情報の断片を煉瓦に焼き付き敷き詰めたインスタレーションにただただ圧倒される。人間が生み出してきた膨大な情報のゴミや生活廃棄物を芸術という枠においてわれわれに突き付ける三島喜美代の作品にとって、城南島という名の埋立地より他にふさわしい展示場所があろうか。ART FACTORYを出た後、近くの城南島海浜公園でサンドイッチをほおばりながら岩波文庫プルースト片手に一休みする。羽田空港に着陸するジェット機が次から次へと頭上を通過していった。