マルティニクの教育

 早稲田でのグリッサン輪読会はついに今日Le Discours antillaisをp.576をもって一旦終了した。残りの部分はメンバーで訳を分担することとし、次回からはLa cohee de Lamentin(2005)を読む。感無量だなあ。今日はデルマスさんに途中からマルティネルさんがマルティニク出身の友人を連れて加わってにぎやかな読書会。グリッサンが引用しこてんぱんに批判する、1848年に奴隷解放をめぐりフランス人代議士がベケ向けに書いたクレオール語の文章(p.570-574)をマルティネルさんに解説してもらう。そしてp.575のLangage et identiteという短いが重要なテクスト(その一節はデリダのLe monoliguisme de l'autreに引用されている)についての白熱したセッション。humanisme/anthi-humanismeをめぐる議論のなかで、humanismeへの反発は「学校教育」をめぐる生徒たちの反発であるというマルティニク出身者のコメントには実感がこもっていた。80年代にマルティニクで学校生活を送ったマルティネルさんは、生徒たちは「われわれの祖先ゴール人」式のフランス史を学び、島の歴史や地理については意識の高い教師のハンドアウト以外の公式の教科書がなかったと語る。カリブ海の文化状況を研究する者はみなそうした状況を頭で知ってはいるが、現実を体験した本人の語る言葉はやはり重い。「ヨーロッパの氷河のことは知っててもペレ山の標高は誰も知らないんだよ。」