タジョ『神(イマーナ)の影 ルワンダへの旅ーー記憶・証言・物語』を読む

辛い読書を終えた。ガエル・ファイユの『小さな国で』はひとつの物語であるのに対して『イマーナの影』ではルワンダのジェノサイドの犠牲となったおびただしい人々の証言がつづられている。ひとつひとつのエピソードは短いがその悲惨さは文章の長短に関係ない。そうしたエピソードの圧倒的な堆積が読者を打ちのめすのだ。

タジョの日本語版あとがきによれば、ルワンダの大多数の人々はイマーナという唯一神を信じていた。タジョはキリスト教信仰の強制によって放棄させられたルワンダ古来の

信仰に敬意を払おうとしてこのタイトルをつけたのだという。ベルギーによる植民地統治がもたらしたツチとフツの悲劇。現在ルワンダ人にあなたはツチですか、フツですかと聞くことは禁じられている。だが再生のために必要なのは忘却ではなく、記憶である。「死者たちの怒り」の章のなかで呪術師は語る。「われら生者なしでは、死者は無でしかない。だがまた死者なしでは、生者は虚しいだけである。」(78頁)ジェノサイドを生き延びたジョセフィーヌは語る、「戦争について子どもたちに言いたいことがあるとしたら、それは憎しみと、大きすぎる野心のせいで戦争が起きるということね。」(162頁)。ルワンダはわれわれの中にある、それに気づかせるのがこの文学の力である。