大西順子カルテット

なんと大西順子が小金井にやってくる(もっともお住まいは国立なのでお膝元といえばお膝元だが)というので妻と聴きに行った。ピアノ・トリオにラテン・パーカッションの大儀見元が加わったカルテット編成。打楽器が優勢でPAもバランスをとるのが難しいのだろう、出だしはピアノとダブルベース井上陽介)がよく聴こえなかったが次第に整った。大西順子さんのピアノを生で聴くのは実に久しぶり。ジャズ好きの生徒からすごい新人っすよと教えられて、六本木のクラブでトリオを聴いたのが最初だった。古い手帳を繰ってみると1993年夏とあった。ファースト・アルバム『Wow』が出た年だ。とにかく小柄な体格からは想像もできないパワーの「どバップ」(変な言い方ですがそのときに浮かんだ言葉)にノックアウトされた。『フラジャイル』あたりまで聴いたがその後ご本人の一時引退とともになんとなく遠ざかってしまった。さて、どんな感じなのだろうと楽しみだったが、大儀見さんのヴォーカル、ラテン・フレイバーも含んだ元気いっぱいのパフォーマンスだった。

ステージは新譜Grand Voyage(2021)からの曲目で構成された。前半1曲目のHarvest! Harvest!はくるくる回る風車のようなメロディが印象的。2曲目のPrintmakersはジュリ・アレンの曲(Geri Allenかー、なつかしいなあ、聴き直そうか)で、モンクの引用がビシッとはまっているパーカッシブな展開。いくつかの曲のなかでバド・パウエルUn poco locoやParisian thoroughfareを彷彿とさせるフレーズ(個人的感想です)が聞こえてきたり、とにかくエネルギッシュかつ繊細。それから、後半最初のドラムス(吉良創太)とパーカッションのデュオがすごかった。リズムが変幻自在に伸縮するのに、なんであんなにぴったり合うのだろう。圧倒的な盛り上がりをみせたラストのWind Roseのあと、バンドは2曲もアンコールに応えてくれた。充実した音楽的時間だった。

疾走する大西順子、健在!!